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39話

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アポロはその後小一時間、休み無しで最前線のアンデッドの大群を蹴散らす。

村の外にはバラバラになったモンスターの残骸の山がいくつも出来上がっていたが、アンデッド大群は相変わらずダンジョンから現れる。

「おっアポロ派手にやってるな!こちらも村の混乱が収まったから、俺もそっちに参戦するぜ!」

アポロが仮設村に目を向けると屋根の上に立つエウスの姿が見えた。

「アポロこれから派手魔法を発動させるから、巻き添い食らわないように周りの
冒険者達を村の方まで後退させてくれ」

「あっはい。ところでローラさんは?」

「あぁローラは村の中の指揮をしているぜ。あの嬢ちゃん何者だ?混乱していた烏合の衆だった村の住民達が、冷静さを取り戻し、冒険者のサポート体制を万全にしてたぜ」

「えぇローラさんは私と違って、頭良いですからね。」

「アポロもただもんじゃないと思うがな…」

アポロは一緒に最前線にいた冒険者達に後退を伝えながら、自身は殿を務める。

アンデッド達はアポロが築き上げたモンスターの残骸に足を取られ進行速度は遅い。

さらにアポロが後退しながら落ちている骨などで相手の足を目がけて攻撃する為、前方のモンスターは脚の大部分が破損し先がつかえ冒険者とモンスターの間に空白地帯が広がった。

冒険者達はアポロの指示に素直従う。

この1時間休み無しでアンデッドを蹴散らし、時には自分達のパーティーの前線が崩れそうになると、目の前の敵を瞬く間に殲滅するアポロに、意見を言える者など誰一人としていない。

いつしか冒険者達は、『白銀赤眼のバーサーカー』のいうことを聞いていれば間違いない。アポロの規格外な戦闘能力は冒険者の信頼を得るには充分であった。

アポロ冒険者の撤退をサポートした後、エウスのいる屋根の上に降り立つ。

現在最前線には、冒険者達が後退し、アンデッドの残骸の山と未だ湧き出るモンスターを残すのみである。

「しかしダンジョンから相変わらずアンデッドモンスターが出てくるな…まぁこれだけのアンデッドの残骸に山と闇の魔力が充満していれば派手なのを使役できそうだ」

エウスはそう言うと、手にした漆黒の杖を天に掲げ唱え始める。その上空に何十にも重なる魔法陣が現れ、さらにその上空に黒い霧のようなものが集まりだす。

黒い霧は雲のようにまとまり始め更に密度濃くし、長さ50メートル程の太さは直径2メートルの巨大な黒い紐状になりエウス達の周りを漂う。

「よし魔法式が組み上がった!闇の上級魔法『ヨルムンガンド』を召喚するぜ!!」

エウスの威勢よく叫び杖の先端をアンデッドの山を指す。

すると黒い物体はアンデッドの山にゆっくりと溶け込むように入り込む。

入り込んだアンデッドの残骸の山は、まるで粘土の様にうねり、捩れ、形を変えていく。

次第にそれは黒い紐状と同じ様に形を変化される。

一言でいえば「八目ウナギ」の様な形であった。しかしよく見るとその体は、アンデッドの残骸を骨ごとミンチにした様で生々しい色である。そして頭部の円形の大きな口は、掘削機を思わせる様な、無数の棘がびっちりと生えていた。

ヨルムンガンドはぐるりと回りを見渡す様に頭を360度回転させると、近くにいるアンデッドを大きな口ですり潰し捕食し始めた。

前線で戦っていた冒険者達は顔を真っ青にして、その残虐な光景を眺めるのであった。
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