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33話

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只今二人は街の一角にある詰所で事情聴取を受けていた。

任意であったが騒動の中心に関わっていた為、変な疑いをかけられない様に協力している。

変態詩人はその後全身から眩い光を放ち、気がついた時には姿が消えていた。

そしていつの間にか直径3センチの大程のガラス玉がアポロの手にしていた。


事情聴取の主な内容は変態詩人についてであった。

「では、君達はあの詩人とは初対面だったという事だね」

「はい。見物客としてたまたま居合わせただけです」

「で、アポロさんの銀貨を受け取り、去り際にこのガラス玉渡されたと」

「はい。そうです」

「なるほど…実はあの詩人は少々問題があった様でね…」

護衛兵の話によると、近年各地で同じ人物だと思われる同じ様な騒動が起きていたらしい。

見た目はその時々で証言が変わるのだが、奇抜な衣装と髪型、そして演奏というなの騒音を撒き散らすのだという。

罪の対象にはならないが、今回も多くの会場の混乱と観客の苦情が後を断たない。

注意をしようとしても演奏が終わるとあの手この手で姿をくらまし、その素顔は誰もわからないらしい。

因みに今回アポロが手にしたガラス玉は念の為、詰所の方で「鑑定」をしたそうだが、特に変わったものでもなく、透明度が多少高く、そこそこ珍しい程度の代物であった。

「ご協力感謝します。何か新たに思い出したら詰所までお願いします」

その後二人は詰所での情聴取が終わり、すっかり暗くなった街を歩く。

事情聴取を受けた詰所は街のメイン通りにあり、等間隔に立っている街灯が夜道を照らす。

アポロの村と違い、この時間でも空いている店が多い様だ。

「アポロにとって散々な休日になったわね…」

「いえいえ、村では出来ない刺激的な体験ができました。最後の演奏もすごかったですし…」

「先程から度々気になったんだけど、あの演奏のどこが良かったの?」

ローラの疑問にアポロは目を輝かして力説し始める。

「…という事で、あの演奏は大規模な戦闘の空気と、そこにいる者達の感情を音楽で表現していました。
あの詩人は相当なやり手ですよ」

ローラはアポロの話を聞いてもあの演奏もとい騒音の評価は変わらなかった。

当然ローラには変態詩人の演奏は、ただ奇怪でデタラメな演奏と叫び声にしか聞き取れなかった。

「素晴らしい!やはり俺の目に狂いはなかった」

透き通った声が、アポロのズボンのポケットの中から聞こえた。

突然の声に驚く二人、アポロはポケットの中から、変態詩人にもらったガラス玉を取り出す。

先程まで何の変哲もなかったガラス玉が、青白い光を帯びている。

「今このガラス玉から聞こえませんでしたか?」

「そ…そうね」

二人が不思議そうにガラス玉を見ていると、ガラス玉から再び声が出る。

「アポロくんといったかな?君は俺と同じで素晴らしい感性を持っている様だ。特別に俺のアトリエに招待させて貰うよ」

ガラス玉から男の声が聞こえた後、ガラス玉がまばゆい光を放つ。

二人はとっさの出来事に目を塞ぎ、その場に屈み込む。

しばらくすると徐々に光が収まり、二人は夜のメイン通りではなく、見知らぬ建物の中にいた。

円形の建物の様で内部は広い。おそらく半径20メートルはあるだろう。

周りを見渡すと壁には無数の書物とガラスでできた機材の数々、上を見上げるとシャンデリアの様な豪華な照明が宙にいくつもぶら下がっている。

そして二人の前方には一人の男性が座り心地の良さそうなソファーで足を組んでいた。

「俺のアトリエにようこそゆっくりと音楽について話し合おうか!」

奇抜な変態の様な衣装ではなく、知的に思わせる落ち着いた礼服を着た男が二人を手招いていた。
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