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28話

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その後二人は冒険者ギルドで護衛依頼の完了を報告し、ローラは晴れてランクDに上がる。

冒険者としてはまだ半人前であったが、ローラにとっては大きな一歩であった。

Fランクの主な一般依頼の内容は、街の中の害獣討伐や、街の近くに自生する薬草の採取である。

駆け出しの冒険者の中でも戦闘系の恩恵を授かれば、セントクロス周辺ので狩猟を行い活躍できるのだが、ローラの能力では狩猟の臨時PTに参加することも出来なかった。

前衛に必要な力は無く、後衛で必要な魔力無く、中衛で必要な索敵や敏捷性も無い。

最近では様々な方面から情報を得て、分析し薬草の採取を行う臨時PTを募集して活動していた。

ローラは戦闘がからっきしだが、採取系の依頼には定評があり、本来割りに合わない採取系の依頼の代表だった薬草採取は、彼女の手にかかれば一定の利益をあげていた。

金欠の冒険者はその噂を聞きつけ臨時PTに入るのだが、稀にモンスターとの遭遇戦がある度、全く戦闘に役に立たないローラを見限り離れて言った。

いつしかローラは底辺の「F」ランクにもかかわらず不名誉な二つ名が広まった。

その二つ名は「黒字アドバイザーのローラ」

常に黒字で依頼を達成するローラは、時折金欠の冒険者達から相談を持ちかけられる。

そのアドバイスは的確であり脳筋の冒険者にも理解しやすかった。

進めれられて依頼を受けたり、アイテムや活動計画を見直すことにより資金振りが改善したPTは数知れない。

冒険者ギルドのアドバイザーに頼むよりも効果がある為、底辺の「F」ランク冒険者にもかかわらず、周囲の評判が上がり二つ名まで持つほどであった。

ローラ自身は実力で高ランクの冒険者に上り詰め、ゆくゆくは英雄を目指している為、その二つ名は不名誉この上ない。

しかし、Dランクに昇格したことにより、単独でも周辺地域の調査や狩猟依頼も個人で受けることができる。
そこで結果を残せば、恩恵に関わらず上のランクに上がることも可能である。

アポロは壁に貼り付けられた冒険者の依頼書を一通り見た後、

「ローラさん。今日はこの依頼を受けて修行しましょうか?」

アポロが依頼に選んだのはFランク冒険者が単独でも受けることのできる下水道の害獣駆除であった。

地下に張り巡らされている下水道は様々なものが流れる。残飯や排泄物はもちろんのこと、稀に貧困層で息絶えた骸までも流れる。

人間にとっては決して好ましい環境ではないが、鼠や虫にとっては食料の宝庫である。

そして、そのまま放っておくとまさにねずみ算式にその数が増え地上にも溢れる。

それは疫病の原因にもなる為、冒険者であれば誰でも受けることのできる。

常時出されている依頼であった。そして同時に冒険者にとって全く旨味もない依頼であった。

ローラは顔をしかめる。

「それはひよっこ冒険者が金に困って行う依頼よ」

「そうなんですか?ローラさんの力を見るにはちょうどいいと思うのですが?」

アポロの何気ない一言にイラっとしたが、修行の一環であれば仕方ないと思い依頼を受けに冒険者ギルドの受付に行く。

「ローラさんがこの依頼受けるなんて珍しいわね…何かあったの?」

馴染みの受付嬢が驚いた様に質問してくる。

「連れにこれを受けろって言われたのよ」

ローラはため息をつきながら、隣の青年に視線を落とす。

受付嬢は、ローラよりも年下であろう端麗な顔立ちの青年をみて、思わず顔がにやけてしまった。

「あら?可愛いお連れさんね…今年の新米冒険者の面倒を見てくれるなんてローラは優しいわね。では臨時PT登録しますから小さな冒険者さんのお名前教えて下さい」

「初めまして。えっと…私は『アポロ』って言います。駆け出しの商人なので…」

受付嬢はモジモジする青年の言葉の一部に引っかかった。

『アポロ』数日前から冒険者ギルド内で話題になっていた男と同名あった。

何でも渓谷にいたコカトリスを瞬殺したとか、道中のモンスターを素手で蹂躙したバトルジャンキーだとか、警備兵の度肝を抜く神足の持ち主だとか、短期間で様々な噂が流れていた。

特徴は白銀の髪を持ち赤眼の男だった。

「まさかね…じゃぁローラさん依頼お願いします」

受付嬢は小さく呟き手続きを終わらせた。

「そのまさかよ…」

ローラも小さく呟き、アポロとローラは冒険者ギルドを後にするのであった。
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