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25話

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あっという間に行きと同じ様にダンジョンから出た二人。

ダンジョンの中で数組のPTと会う時以外は基本アポロの移動速度は変わらない。

ローラも異常な状態になれた様で、的確にナビゲーションするだけでなく、めまぐるしく変わるダンジョン移動を楽しんでいる節があった。

日の届かないダンジョンの中では時間の感覚が狂う。

予定ではその日の夕方には街に戻る予定であったが、日が地平線からで初めていた。

「あれ思っていたよりも長くいたみたいですね」

「そうね。まぁ急ぎの予定はないから何処かで腹を満たしたら休みましょう」

欠伸をして若干眠そうな二人に、男が一人近づいてきた。

この男ある意味只者ではない、動物の毛皮の腰巻き付け、鮮血の様に紅く染まった両手斧を担ぎ、雄羊の角が生えた鋼鉄のヘルムを被っていた。

そして理由はわからないが上半身裸の蛮族の様な出で立ちで先程よりも早い足取りで二人に接近してきた。

身構える二人に蛮族の男は膝を折り言葉を発する。

「ローラお嬢様よくぞご無事で!」

その声量は周りの人々が振り向くには充分な大きさであった。

驚く二人の目の前でヘルムを外したその男は、招き猫の強面店長であった。

周りの注目を一気に集めた。屈曲な体つきの男を膝を折る対象はまだ若い冒険者の女性である。

周りにいた人々の好奇の視線が痛い。
隣にるアポロはなぜその様な事になったのかわからず、ローラに疑問の眼を向けている。
「とりあえずお腹すいたから朝ご飯しましょうか。話はそこで聞きます」

周りの視線があるからといって動転していては冒険者として舐めらると思い。

ローラはさも当たり前の様に振る舞う。

その堂々とした行動に周りはローラを一目おき一段落ついた判断し、視線の数が減っていった。

その後、強面店長のインパクトが強すぎる為、一同は招き猫店2階のリビングに移動する

店の従業員が営業をしていたが、ローラの姿を見た途端、安堵の声が聞こえ肩の力が抜けていた。

「ところでなんで店長がダンジョンの前にいたんですか?」

アポロがいきなり核心を突く質問をした。

「そりゃダンジョンに入ったきり音沙汰なったら一大事ではありませんか?
ここは猫招き店仮設村店長として救助しようとしていたのです」

強面店長曰く、ローラの監視をしていたローレンスお抱えの斥候が二人がダンジョンに入った直後に消息が分からなくなったと相談して来たのが始まりであった。

初めは第一階層の探索だと思って探したのだが見つからず、斥候達はダンジョンの装備を用意していなかった為、一度戻り街で情報の収集と強面店長に相談を持ちかけた。

初めは夕暮れには戻ってくるだろうと楽観視していたが夜になってもダンジョンから出てくる気配がない。そこで元冒険者の強面店長が中心になって下の階層に探索する予定だったという。

「店長は昔冒険者として各地の遺跡を探索していた実績と経験があります。
ローラお嬢様の安否がわからなかった為、協力してもらおうと思っていたのです」

部屋の隅の暗がりからそろりと人影が現れる。

その姿は以前ローレンスの隣にいた執事であった。

「あぁそういう事だったの……心配かけたみたいね。私たちはさっきまでダンジョンで商売をしてたのよ」

「「ダンジョンで商売??」」

「そうです。ローラさんのお陰でたくさんの冒険者さんに喜んでもらえました」

ニコニコするアポロに話を聞いた強面店長と斥候執事はいまいち理解ができなかった。

その状況に見かねたローラが説明しはじめる。
説明が終わると二人は腕を組み少しの時間考えた後、斥候執事が口を開く。

「まさかそんな商売方法がったとは……しかし、ダンジョンで長時間その場にとどまるのはリスクが高過ぎます。
本来移動時間もかかりますし、アポロさんの身体能力があって初めて成り立つ商売ですね……」

アポロは自分が褒められた様で照れ臭そうにするも、商売の計画はほとんどローラが立てていた。
自分は移動の協力と時折やってくるモンスターの駆除くらいである。あまり商人らしい事をしていない事に気がつき次第にテンションが低くなる。

「アポロ!自信を持ちなさい。奇策とは言えあなたがいなければダンジョンであった冒険者達はあんなにも幸せと安全を手に入れることはできなかったわ」

アポロは遙かに商才を持つローラに言われ元気を取り戻す。

「それに護衛だといっていた私はロクに護衛の仕事もしてなかったわね」

今度はローラが肩を落とすがアポロは思った事をそのまま口にする。

「ローラさんはダンジョンで多くの冒険者から言われてたでありませんか。商売を通じて僕だけでなく多くの人を助けてくれました」

アポロの飾り気のない言葉はローラの荒みかけた心に一筋の光を当てた。

それを見た執事はなぜローレンスが今回の依頼を行ったのか理解したのであった。
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