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13話
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一夜明けアポロはローレンツ邸を後に速商人ギルドに向かう。
今回は昨日の様に屋根の上の移動ではなく、ローレンスが用意してくれたお抱えの馬車での移動になった。
理由は2つ。
1つ目は、夕食でアポロ独自の移動方法が話に持ち上がり、街の警備兵に見つかった場合、決して良い印象を受けないことを教えてもらった。
商人は不用意に悪目立ちをするものでは無いとローラに強めの口調で屋根の上の移動を禁止された。
昔、ボッター師匠にも同じ様なことを言われことがあった為、今後は緊急で無い限り屋根の移動を控えようと心に決める。
2つ目は、依頼を出す為にローレンスとローラが一緒に商人ギルドと冒険者ギルドに行く為に一緒に移動した方が効率が良いからだ。
本日の予定では2カ所で手続きを行った後、依頼の荷物を受け取って出発する予定だったからである。
馬車の中ではアポロとローラとローレンスと秘書の男性の4人が座ってもまだ余裕のある大き目の内装であった。
かなりの速度が出ているのだがトーマスの荷馬車と比べて揺れが少なく、水の入ったコップを置いても溢れることがないのでは無いのかと思うほどの安定感を保っていた。
不思議に思っているアポロに気がついたローラが自慢げに話を始める。
「この馬車は特別製なのよ。地面に設置する車輪に最新技術の対衝撃吸収加工を行うだけでなく、馬車本体と車軸の間にスプリング機構を装備することにより揺れが抑えられるのよ」
「それはすごいですね。こんな馬車で街と街を移動出来たら乗ってるお客さんが喜びそうですね」
何気なく言ったアポロの何気ない一言に、打ち合わせを行なっていたローレンスと秘書の会話が、一瞬止まった様な気がしたが気のせいであろう。
因みに今日のローラの服装は昨日のフルプレートでは無かった。
昨晩の話し合いの時、アポロの説得によるところにある。長期の移動で体に負担の掛かる重装備は有効的ではないこと、そもそも装備に筋力が付いていないことを挙げた。
ローラは威厳がなくなると渋ったが納得してくれた。
よって今日の服装はローラが冒険者を始めた時に装備していた。
主に革素材を用いた軽装備である。
出会った時のロングソードはそのままだが途中でバテて動けなくなることはないだろう。
程なくして見覚えのある青い屋根が馬車の小さな窓から見えてくる。
商人ギルドの大きな門を抜け、建物の入り口横付けされた馬車から降りる4人。
昨日とは様子が異なり入り口に商人ギルドの職員が数人待っていた。
「お待ちしておりましたローレンス様。
本日は本人自ら依頼を出していただき有難うございます。
昨日連絡頂いた下請け契約の為の部屋を用意しておりますので案内させていただきます」
「あぁ有難う。そうそう隣にいるアポロくんの商人のギルドカード受け取りとギルドの説明もお願いしていいかな?」
「畏まりました。当方の職員を当てさせて頂きます」
対応も昨日のアポロと時と対応が異なっていた。
これが大商人の力というものなのだろうか、隣にいるローレンスさんが大きな存在に見える。
そしてそんなローレンスと知り合いのボッター師匠のすごさを改めて認識していたアポロであった。
入っていくとカウンターから見覚えのある顔がカウンターから顔を覗かせる。
「あらアポロさんおはようございます。早速ギルドカード取りにきたのかしら?」
「エリザベスさんおはようございます。今日はギルドカード受け取りとローレンスさんの下請け依頼を受けにきました」
笑顔で返答するアポロ。
エリザベスも笑顔を返したが、内心では大きくガッツポーズを行なっていた。
最初アポロが招き猫代表のローレンスと一緒に馬車から降りてきた時は驚いた。なんとなく容姿の良さで便宜を図ったがまさかの展開である。
新米商人が初日から指名の下請け依頼を行うのは異例である。
まだ実績の無い商人が受けられる下請け依頼といえば、依頼とは名ばかりの日雇いの依頼だ。
当然その料金もたかが知れている。
長い時間をかけて己の有能さと顔を周囲にアピールし信頼を得ることで、漸く指名の依頼をもらえるのである。
しかし目の前のアポロはそんな行程をすっ飛ばし、いきなり大物の指名依頼である。
顔見知りであったとしても、登録したばかりのひよっこ商人にはありえない功績であることは変わりない。
エリザベスにとっても自分のギルド内の立場をあげるまたとない好機であった。
「アポロさんとは面識がありますので私エリザベスがアポロさんの案内しますね」
エリザベスは流れる様に受付から出て自ら案内を買って出る。さりげなくローレンスに名前を売っておく事も忘れない。
「えぇエリザベスさんおねがします。そうですね…こちらの『女性冒険者』はアポロさんの護衛を行う予定なので一緒によろしいかな?」
「はい、畏まりました。では、早速説明を行う為部屋に案内させて頂きます。アポロさんと女性冒険者さんどうぞこちらに…」
ローラはなぜ自分の名前を公表しなかったのか疑問に思ったがそのままアポロとギルド職員のエリザベスについていくのであった。
今回は昨日の様に屋根の上の移動ではなく、ローレンスが用意してくれたお抱えの馬車での移動になった。
理由は2つ。
1つ目は、夕食でアポロ独自の移動方法が話に持ち上がり、街の警備兵に見つかった場合、決して良い印象を受けないことを教えてもらった。
商人は不用意に悪目立ちをするものでは無いとローラに強めの口調で屋根の上の移動を禁止された。
昔、ボッター師匠にも同じ様なことを言われことがあった為、今後は緊急で無い限り屋根の移動を控えようと心に決める。
2つ目は、依頼を出す為にローレンスとローラが一緒に商人ギルドと冒険者ギルドに行く為に一緒に移動した方が効率が良いからだ。
本日の予定では2カ所で手続きを行った後、依頼の荷物を受け取って出発する予定だったからである。
馬車の中ではアポロとローラとローレンスと秘書の男性の4人が座ってもまだ余裕のある大き目の内装であった。
かなりの速度が出ているのだがトーマスの荷馬車と比べて揺れが少なく、水の入ったコップを置いても溢れることがないのでは無いのかと思うほどの安定感を保っていた。
不思議に思っているアポロに気がついたローラが自慢げに話を始める。
「この馬車は特別製なのよ。地面に設置する車輪に最新技術の対衝撃吸収加工を行うだけでなく、馬車本体と車軸の間にスプリング機構を装備することにより揺れが抑えられるのよ」
「それはすごいですね。こんな馬車で街と街を移動出来たら乗ってるお客さんが喜びそうですね」
何気なく言ったアポロの何気ない一言に、打ち合わせを行なっていたローレンスと秘書の会話が、一瞬止まった様な気がしたが気のせいであろう。
因みに今日のローラの服装は昨日のフルプレートでは無かった。
昨晩の話し合いの時、アポロの説得によるところにある。長期の移動で体に負担の掛かる重装備は有効的ではないこと、そもそも装備に筋力が付いていないことを挙げた。
ローラは威厳がなくなると渋ったが納得してくれた。
よって今日の服装はローラが冒険者を始めた時に装備していた。
主に革素材を用いた軽装備である。
出会った時のロングソードはそのままだが途中でバテて動けなくなることはないだろう。
程なくして見覚えのある青い屋根が馬車の小さな窓から見えてくる。
商人ギルドの大きな門を抜け、建物の入り口横付けされた馬車から降りる4人。
昨日とは様子が異なり入り口に商人ギルドの職員が数人待っていた。
「お待ちしておりましたローレンス様。
本日は本人自ら依頼を出していただき有難うございます。
昨日連絡頂いた下請け契約の為の部屋を用意しておりますので案内させていただきます」
「あぁ有難う。そうそう隣にいるアポロくんの商人のギルドカード受け取りとギルドの説明もお願いしていいかな?」
「畏まりました。当方の職員を当てさせて頂きます」
対応も昨日のアポロと時と対応が異なっていた。
これが大商人の力というものなのだろうか、隣にいるローレンスさんが大きな存在に見える。
そしてそんなローレンスと知り合いのボッター師匠のすごさを改めて認識していたアポロであった。
入っていくとカウンターから見覚えのある顔がカウンターから顔を覗かせる。
「あらアポロさんおはようございます。早速ギルドカード取りにきたのかしら?」
「エリザベスさんおはようございます。今日はギルドカード受け取りとローレンスさんの下請け依頼を受けにきました」
笑顔で返答するアポロ。
エリザベスも笑顔を返したが、内心では大きくガッツポーズを行なっていた。
最初アポロが招き猫代表のローレンスと一緒に馬車から降りてきた時は驚いた。なんとなく容姿の良さで便宜を図ったがまさかの展開である。
新米商人が初日から指名の下請け依頼を行うのは異例である。
まだ実績の無い商人が受けられる下請け依頼といえば、依頼とは名ばかりの日雇いの依頼だ。
当然その料金もたかが知れている。
長い時間をかけて己の有能さと顔を周囲にアピールし信頼を得ることで、漸く指名の依頼をもらえるのである。
しかし目の前のアポロはそんな行程をすっ飛ばし、いきなり大物の指名依頼である。
顔見知りであったとしても、登録したばかりのひよっこ商人にはありえない功績であることは変わりない。
エリザベスにとっても自分のギルド内の立場をあげるまたとない好機であった。
「アポロさんとは面識がありますので私エリザベスがアポロさんの案内しますね」
エリザベスは流れる様に受付から出て自ら案内を買って出る。さりげなくローレンスに名前を売っておく事も忘れない。
「えぇエリザベスさんおねがします。そうですね…こちらの『女性冒険者』はアポロさんの護衛を行う予定なので一緒によろしいかな?」
「はい、畏まりました。では、早速説明を行う為部屋に案内させて頂きます。アポロさんと女性冒険者さんどうぞこちらに…」
ローラはなぜ自分の名前を公表しなかったのか疑問に思ったがそのままアポロとギルド職員のエリザベスについていくのであった。
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