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11話

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ローレンスから突拍子も無い提案が出た。

アポロは戸惑いを隠せない。

商人にとって護衛を雇う事は不思議なことでは無い。

街から街への移動の際外敵から身を守る為に雇うのは勿論。

取り合う商品によって客は様々だが治安の安定していない所では用心棒を雇うことはこの世界では常識とも言える。

しかしまだ商人を目指して間もないアポロにとって武力による脅しはあまり脅威ではないし、また取り扱う商品すら決まっていない現段階で護衛を雇うのは次期早々である。

そしてローラは護衛というにはあまり戦闘に役に立つとは重わえない恩恵の内容であった。

どちらかと言うと学者の様な恩恵である。

「アポロ君にとってローラを護衛に雇うことは色々な面で役立つと思うぞ。
なに物は試しだ。短期間組んで見てくれ。安心してくれ護衛費用はこちらで出そう」

矢継ぎ早に話を持って行くローレンス。彼には明確なビジョン持っているのか、少々強引に娘のローラを護衛に推薦して行く。

「まだ商人になりたての私が護衛を雇うなんて早すぎますよ。それに…」

アポロは断りを入れようとした時、ローレンスの横に立っていたローラが口を開く。

「お父様何を言っているの?私はこれから世界を救う英雄になるのよ。今日はたまたま良い依頼がなかったから本社の警護してあげてたけど暇じゃないのよ!」

フルプレートの中から苛立ちを含んだ強い口調で言い放たれる。

アポロは勢いの強さで恐縮してしまいこちらから断るタイミングを失う。

ローレンツは隣にいるローラをなだめると話を続けた。

「ではこういうことにしよう。アポロ君にはうちの新しくできた仮店舗への臨時物資配達の下請けを依頼するから、ローラはその護衛任務を頼む。場所は発見されたダンジョン入口の仮設村だ」

詳しい内容は以下の通りだ。

セントクロス王国から2日ほど離れた場所に最近ダンジョンが発見されたそうだ。

そこに物資の輸送の下請けと報告を一週間以内にお願いしたいとのことである。


ダンジョンーーー
古代文明の遺跡や知的モンスターの巣、また魔素の濃い地域で自然発生的に生まれる迷宮の総称である。
生息するモンスターや行く手を遮る罠の数々、ダンジョン攻略は名をあげる英雄志望の冒険者にはステータスの一つになる。
ダンジョン攻略は時間とそれに対する様々な物資が必要になる。
規模が大きければ近くに拠点を作り腰を据えて攻略しなければならない。
そうなるとやがて調査の為の仮設村ができ始める。
ダンジョンからはモンスターの素材や遺物の数々が手にはいる。
冒険者にとっては貴重な収入源なのだが一々街に戻って換金していたら莫大な時間がかかる。
多少安値になってもダンジョン攻略に時間を割いた方が効率がいい。
商人達は街の外の為外敵に襲われるリスクが高くなるが、それに見合った掘り出し物を格安で仕入れる可能性がある。
それとは別に冒険者ダンジョン攻略の消耗品の売買は街よりも割高で行えるなど、動く金の額が異なる。
もちろんアポロにとって経験を積むのに良い機会である。


「情報によるとダンジョン周囲や表層の階は安全とのことだ。ローラにとっては初のダンジョン見学。アポロ君は下請け依頼の経験にいい機会だろ?
日程は余裕があるから余った時間は仮設村でも見て回るがいい」

「お父様!その話のったわ!アポロあなたもこの好条件にのるわよね!」

「えっあっはい」

先程とは打って変わって依頼にノリノリのローラの気迫押され思わず返事をするアポロ。商人の勉強になる様なのでそのまま承諾した。

その後詳しい依頼内容を聞き契約書を作成して行く。

「それではアポロくんは、明日正式な商人なる様なので招き猫からの使命依頼を受けてくれ。今日はせっかくだからうちに泊まっていきなさい。ローラはアポロくんの道案内を頼んだぞ。私はこれから商談があるのでせきをはずさせてもらうよ」

ローレンスとその秘書は応接間から去った後、アポロとローラが取り残された。

長い沈黙の中、ローラがフルプレートのヘルメットを外す。

金色にかがやく長い髪が扇状に広がる。先程まで聞こえてきた勢いとは想像のつかない容姿が現れた。綺麗というよりも可愛い系の顔立ち。重厚なフルプレートには似つかわしくない顔立ちであった。

「自己紹介がまだだったわね。私はペルシャ・ローラよ。もうわかってると思うけど招き猫紹介代表ペルシャ・ローレンスの娘よ。
冒険者を始めて1年経つわ。いずれこの世界の歴史に残る伝説的な英雄になる予定よ。短い間だと思うけど一緒に入れたことを光栄に思いなさい」

「あっアポロっていいます。つい最近まで村で商人になる為、ボッター師匠の元で商いの修行をしていました。不束者ですがよろしくの願いします」

「商人ねぇ……。さっきの水晶の結果からお父さんがおかしなこと言ってたけど…中庭の動きからあんたも冒険者になった方がいいんじゃない?
私のお供1号にしてあげてもいいわよ」

「いえいえ力では何も解決しませんよ。私は立派な商人になって師匠の様に人の役にたちたいのです」

「ふーん。そう、じゃあうちの屋敷に連れて行くついでにダンジョン村にむけて準備でもしましょうか」

お互いの簡単な自己紹介も終わり日が傾き始めている街に向かう二人であった。
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