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3話

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賑やかな宴が佳境にさしかかかった時、アポロはボッター師匠から成人祝いとして鮮やかな布袋に包まれたプレゼントが渡された。

「これは俺がまだキャラバン隊を組んで商いをしていた頃の相棒だ使ってくれ」

アポロは早速布袋を開くと中身は革製の肩掛けバッグだった。

大きさは一般的な大きさだが、それに不釣り合いなしっかりとした厚みのある補強された肩紐と接続金具が特徴的である。

革のバッグの表面は歳月を重ね味わいのある色をしていた。

「このバッグは容量増加のエンチャントがかかっている。
容量は見た目の10倍は入る優れものだ。
荷物の重さは変わらんがアポロにはまぁ問題ないだろう。
これからの商人人生の力強い相棒として是非役に立ててくれ」

「ありがとうございます。大切に使わせてもらいます」

「アポロは明日にはこの村を離れるのかい?」

「はい師匠。世界中を師匠のような商人になる為に日々努力していきたいと思います」

「そうかそうか……では村を離れる前に渡したいものがあるから旅立つ前に店に必ずよりなさい」

「わかりました。必ず寄らせていただきます」


宴の後、アポロは夜空を見上げながら家路につく。

アポロの住んでいる場所は人里離れた森の中である。

物心ついた頃からこの小屋に住んでいた。

今は亡き両親は世捨て人の様に森で生活を行なっていた為、
アポロ自身もそのまま住んでいたが、それも今日で終わりである。

明日から商人に向けての人生が本格的に始まる。

この日の為に商人になれる様に師匠の元で様々のことを学びました。

初めはボッター師匠に本気かどうか試され、試練として周辺のモンスターを討伐しては、その証拠を渡して来た。

その甲斐もあり、次の年には店番や隣町への買い物などを手伝わせて貰い、

今日では読み書きに計算などもなんとか身につけることができました。

授業料として森で取れる動物渡すだけで、こんなに勉強させていただいたと思うと師匠には感謝しかありません。

そんなことを今までのことを思い出していると唸り声が聞こえてくる。

そして、気づくとアポロの周りに10数匹の四足獣に囲まれていた。

星明かりに照らされ四足獣の目が時折輝く。

「フォレストウルフかここまで多いと面倒ですね」

フォレストウルフーーーーー
単体ではそれ程の脅威では無いが、常に群れで狩りを行う狡猾な獣である。
嗅覚が優れ夜目も聞く為、闇夜の森で狩猟を行う。
時折、村人や家畜を襲う厄介者だが毛皮や肉に価値がある為、冒険者やハンターの資金源になっている。

「まったく、人が思い出に浸っているのに間が悪いなぁ」

ため息をついたアポロに早速フォレストウルフの一匹が襲い掛かった。

フォレストウルフの牙がアポロの首元を捉えると思われたが、牙の攻撃は空を切る。次の瞬間フォレストウルフの頭は地面に叩きつけられいた。

隣で首を傾けて腕を回しながらアポロは赤い目を輝かせ微笑む。

「まぁいいか………。師匠へ旅立つ前の贈り物にしようかな」

今度はフォレストウルフが複数同時に攻撃を行なったが一匹としてアポロを捉えることができなかった。

先ほどまでアポロが立っていたところには誰もいなかった。

勢いのついたフォレストウルフは互いにぶつかりいがみ合う。

そんな事をしているうちに、その中のフォレストウルフが短い悲鳴と共に頭を地面に叩きつけられる。

一匹また一匹フォレストウルフが生き絶える。

姿を捉えられないフォレストウルフは一方的にその数を減らしていく。

僅かに確認できるのは月明かりに照らされて、時折見える二筋の赤い目の軌跡と四方八方から巻き起こる土煙である。

最後は恐怖に怯えた数匹のフォレストウルフが蜘蛛の子を散らす様に逃げようとしたが、ことごとく命が潰えていった。

あたりが静かになった時、その場に立っていたものは銀髪赤眼のあどけなさをまだ残した青年であった。

アポロはいつものようにフォレストウルフの毛皮の価値が下がらないように首の骨を手刀で叩き折っていた。並の人間には到底不可能な芸当であった。

「ふーなんとか綺麗に倒せました。力加減を間違えると最近はとびちっちゃいますからね」

鼻歌交じりにフォレストウルフたちを器用に抱えて住み慣れた小屋に向かうアポロであった。
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