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第2話
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僕は、夏が嫌いだ。暑いし。自分は汗をよくかくから、この季節には体臭を気にして人とはあまり近づかないようにしている。もっとも、俺に近づいてきて話してくれるような友達もそう多くはないのだけれど。
僕は、冬が好きだ。寒いと、頭が冴えるような感覚になる。自分は雪というものが気に入っている。衛生的には汚いと聞くが、そうと知っていても、しかしそれが目に映れば自分の脳はそれを美として認識する。それと、冬に布団に入る瞬間がとても好きだ。体がそれを渇望していて、望みを叶えついにそれを投げ出す。その瞬間、自分の知りうる言葉では言い表せない心地よさに包まれる。その一瞬のためにその日努力したと思えるほどだ。
今は、冬のほんの初期と言ったほどだろうか。肌はもう鋭い空気に刺されている。
吐く息は白くとぐろを巻き、木々はもう少なくなった色褪せた葉を、落とすまいとふんばっている。昨日の雪の予報と休校の希望は、夏の間は無数についていた蝉の抜け殻のように、いつの間にかどこかへ消えてしまったらしい。
10分ほど歩けば我が学校についにたどり着いた。人の多いところに来ると、"ざわざわ"がどんどん大きくなっていく。何もない小さな町で、学力は中の下といったところであるので、人も言うほど多くはないが。
錆びて金属むき出しの校門を前になんとなく立ち止まると、役目の時を待つ葉のすっかり落ちた桜の大木に蝉の抜け殻が見えた。"ざわざわ"が耳に響いた。
なんとなく、"聞きたい" 気分になった。
ゆっくりと目を閉じ、大きく一度息を吸い、短く少し吐いて息を止める。耳に神経を集中させる。"ざわざわ"が、どんどん大きくなる。
僕は、冬が好きだ。寒いと、頭が冴えるような感覚になる。自分は雪というものが気に入っている。衛生的には汚いと聞くが、そうと知っていても、しかしそれが目に映れば自分の脳はそれを美として認識する。それと、冬に布団に入る瞬間がとても好きだ。体がそれを渇望していて、望みを叶えついにそれを投げ出す。その瞬間、自分の知りうる言葉では言い表せない心地よさに包まれる。その一瞬のためにその日努力したと思えるほどだ。
今は、冬のほんの初期と言ったほどだろうか。肌はもう鋭い空気に刺されている。
吐く息は白くとぐろを巻き、木々はもう少なくなった色褪せた葉を、落とすまいとふんばっている。昨日の雪の予報と休校の希望は、夏の間は無数についていた蝉の抜け殻のように、いつの間にかどこかへ消えてしまったらしい。
10分ほど歩けば我が学校についにたどり着いた。人の多いところに来ると、"ざわざわ"がどんどん大きくなっていく。何もない小さな町で、学力は中の下といったところであるので、人も言うほど多くはないが。
錆びて金属むき出しの校門を前になんとなく立ち止まると、役目の時を待つ葉のすっかり落ちた桜の大木に蝉の抜け殻が見えた。"ざわざわ"が耳に響いた。
なんとなく、"聞きたい" 気分になった。
ゆっくりと目を閉じ、大きく一度息を吸い、短く少し吐いて息を止める。耳に神経を集中させる。"ざわざわ"が、どんどん大きくなる。
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