第一次次元大戦

アザラシくん

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ヤバい奴

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 ~翌朝~

 俺、氷河蛍は、とてつもなくイライラしていた。昨日ババ抜きで15連敗したこともある。が、そんな事よりも。
 《土曜授業ってなんだよ~!?》
 ごく稀にある地獄の祭典、土曜授業・・・・。金曜日の"明日は休みだ~"というウフフアハハな気分を根本から崩す、まさにじ・ご・くッ。しかも昨日奏に殴られた足。(※バットは避けた)折れたかと思った。まだ痛い。やっぱ折れてる?

 「折れてたまるか。」

 「やっぱそうか~。さすがにあのマウンテンメスゴリラのパンチでも折れる訳…ン?」

 隣には……マウンテンメスゴリラがいた。笑ってるけど笑ってない。
《終わったーーッ》

 「お、おは↑、よよう」

 声が震える。

 「うん、おはよう。どこにマウンテンメスゴリラがいるのかな?」

 《…怖ッッ!笑ってるのに殺意がにじみ出ている…!》

 「幼稚園から一緒だとねー、大体あんたが何考えてんのかわかってくるんだよね~」        

《テレパシーか!?いらない能力身に付けんじゃねーッ!》

 「ふーん。そ、そそうなんだー。アハ、ハハハハハ。」

 笑うしかない。

 と、そこに茶髪の小柄な男子生徒が見えた。手には…バット!
 意を決し、ダッシュする。

 「恭太~~!」

 スタートは順調。

《恭太なら少しは庇ってくれるはずッ…!》
 
「ン、おはよ蛍ー……え"?!」

~恭太の頭の中~~~~~~~~~~~~~
 蛍の後ろに黒い影。漫画で見るような吊り上がった目。そして、奏の体から立ち上る重い"気"。
 
 蛍を庇う→game over
 奏に声をかける→game over
 奏に立ち向かう→game over
 2人で逃げる→game over

 蛍を置いて逃げる→◎ 

 ……。逃げよう。    ※蛍 < 奏への恐怖 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 《え"》

 …恭太が視界から消えていく。100メートル走10秒の男だ。追い付ける訳もない。※中学生
《ああ、最後に○○屋のカツ丼食べたかったな~》
 
 マウンテンメスゴリラの足音が近づく。

 「足は大丈夫そうね~♪」
 
 《こ、殺される~ッ!》

 「くッ。やや、やるなら一思いにやれ……ッ」

 そんな気はなさそうだ。全てを悟り、目を瞑った。


そのとき。

 「やあ。」

 《?》
 聞き覚えのない声を耳にし、蛍は、恐る恐る目を開けた。
 見ると、黒髪で黒いコートという姿の男が立っていた。身長からして、年は同じ位だろう。

 「あんた、誰?」

 奏も知らないようだ。
 男は顎に手を当て、上を見て考え始めた。

 「うーん。カラス、とでも名乗っておくよ。君たちが僕を知らないのは、当然のことだ。まぁ、僕は君たちのこと知ってるけどね。」

 《? たち・・ってことは俺も入ってる?じゃあこっちも向けよ!なんで奏とだけ見つめあってんだよ!》

 「ああ、ごめんごめん。ここを退いたら氷河君がやられるかなー、と思って。」

 納得しかけて、思い留まる。                                    《………こいつもテレパシーか~ー?!》

 「んー。テレパシー、というよりかは、顔の動きや心音から考えていることを推測している、と言った方がいいかな。」

 「んもう しゃべんな!頭おかしくなる!」

 奏はぽかんとしている。人がテレパシーで思考を読まれてる、と知らなければ、今 目の前で起きていることは"chaos"だ。

 「君たちもできるようになるよ。」

 「「は?」」

 …ハモった。
 じゃなくて、何言ってんの?ヤバい宗教の勧誘か?面倒臭そう。逃げるか?

 「怪しい者じゃあないよ。この年で宗教って…。そう見える?それに逃げることもできないと思うけど。あ、それと光 恭太は?一緒じゃあないの?」

 「…お前が子供だからってヤバそうなことには変わりない。“逃げることはできない”なんて言われて友達の居場所を教えると思うか?」

 隣で奏も頷く。

 「ふーん、なるほど。学校に向かったのか。100メートル走10秒か~。面倒臭いなー。」

 《テレパシー使えるんだった~~♪》

 俺が親切に顔に出している一方で、奏はなんとか動揺が顔に出るのを抑え、会話を続ける。

 「で、なんの用?私達、もう学校行かないといけないんだけど。」

 男が思い出したように口を開く。

 「ああ、今日は学校ないよ。」

 「あーそれはありがたい。じゃねーよ!「明日は授業あります」って先生言ってたぞ!」

 奏とは違うクラスだ。2クラスの先生が言い間違える   とは考えにくい。

 「ま、とりあえず恭太君呼んで来てよ。説明するから。」

 まるで俺たちがおかしいと言っているような言い方だ。

 《なんなんだ、こいつ……?》
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