海賊団に攫われた貧民〖イラストあり〗

〖203〗イカれた海賊

気さくな紳士の振りをして近づいてきた、イカれた海賊。
出会った時から本性の読めない男だった。


「キスをくれませんか？」


しかし今は、最初よりもずっと分からない。
紫の瞳は昨日と同じことを言って、じっとこちらを見つめてくる。


「"お願い"です」


いつもみたいに脅せばいいのに、変な話だ。
こんなに真剣な眼差しは彼に似合わない。いつもへらへらしてる彼とは別人みたいだった。


「お願い」


シオンは恐る恐る顔を近づけた。

変な空気に耐えられなかったのだ。

果たして、狙いは斜め下に外れた。


「·····」


ぱっちりと目が合う。
咄嗟に俯く。

「キスをしたい」なんてからかわれてるに違いないんだ。バカ正直に信じて、しかも上手く出来なかった。顔から火を吹きそうな思いだ。


「·····エル·····」


彼は初めと同じように顔をかたむけてきた。
吐息が上唇を撫でる。寸前で、バレンはぴたりと動きを止めた。

こっちから触れるのを待っているんだ。

シオンは迷った末、強くまぶたを閉じる。
そしてほんの少し頭を持ち上げた。

表面の唇同志を重ね合わせるだけのコレに、なんの意味があるんだろう。
まったく理解できない。
けれどなぜか、呼吸をするのさえ恥ずかしい気分だ。

離れかけた唇を追うように、今度は相手からしっかりと唇を塞がれる。

後頭部に回された手のせいで頭を固定されてしまう。
何度も、色んな角度で唇に吸いつかれた。
シーツの中の手が腰を引き寄せた。

「·····ン·····ッ」



もぐもぐ動きながら、熱い舌が顔を出す。
それが口内を埋めつくしながらうねる。飲み込めなかった唾液が枕を濡らした。


「んぅ·····っ·········はぁ·············──あ·······」


腰をさ迷っていた手のひらが肌をスルスルと滑る。
くすぐったくて気持ちいい。
腰を掴まれると、大袈裟に身体が震えた。
内腿を撫でた手の先が、やがて蜜部にくい込んだ。


「·····や·····っ」


肉は自分でも驚くほど柔らかかった。
引き込むように指に吸い付く。
彼の指はそれをこっちに分からせるように、わざと浅い所で一回転した。