196 / 217
〖193〗誇り
しおりを挟む「俺たちヨナ民族は、今までいろんな障害や災害にぶち当たってきた。犠牲も付き物だった。その度に数え切れないほどの試行を凝らして、何百何千の年数を繰り返し、乗り越えてきたんだ」
彼は誇らしげだった。
「異邦人の手助けなんかいらない。俺は長として、先祖から引き継いだヨナを守るんだ」
小屋を吹き抜けてゆく風が、全身を撫でてゆく。
包み込まれるような心地良さだった。
「これからも必ずやってけるさ。土地神ツェオスと共に·····」
「·····」
きっと、風通しのよい小屋のせいだろう。
みぞおちの辺りに懐かしいせつなさを感じる。
この島のことなんて知らない。
たった数日前に知ったばかりで、無理やり連れてこられた場所だ。
首を突っ込まず、無関心でいるべきだ。そう思っていた。
彼はもうこちらを振り返らなかった。
広い背中は、とても同じ歳の少年のものとは思えぬほど立派だ。しかしどこか不安げにもみえる彼を支えるように、シオンはそっと、隣へしゃがみ込んだ。
この時は知らなかったのだ。
ヨナ島で進められている、恐ろしい計画を。
月が真上から傾いた頃、青年はおもむろに起き上がった。
ベットのシーツから舞った繊維が、月光に照らされて白い。それよりも透明な輝きをもった蒼銀の髪から朱い瞳が覗いた。
じっと耳を澄ます。
同じ階に、2人の気配。残りの2人はデッキ側の上階だ。
皆一定の呼吸を繰り返している。
ロミオは部屋を出た。
ディアゼルの4人には違う島を教えていた。
彼らに指した島の周りには、小さな列島がいくつも浮かんでいる。
そこから少し離れたヨナ島は、他の離島と違い岩石の山の向こうにある。彼らが自力で見つけ出すにはかなりの時間を要するだろう。
行動を共にするのはここまでだ。
4人は邪魔になる。
船の尻尾位置へ到着する。
ビンゴだ。埃を被ったボートが、柱へ縛り付けられていた。
ここからヨナ島までは、約240キロ。
一日半で到着するだろう。縄を解き終えたところで、ロミオは階段を振り返った。
人の気配が近づいてくる。
こんなに近付かれるまで気が付かないのは初めての事だった。
「感がいいな」
姿を現した男が言う。
計画は変更だ。
ロミオは腰へ手を伸ばした。
一息に処理すれば問題ない。
「けどそのボートは、2人で漕ぐ方が効率が良い」
相手は不敵に笑った。
1
お気に入りに追加
953
あなたにおすすめの小説
夏休みは催眠で過ごそうね♡
霧乃ふー 短編
BL
夏休み中に隣の部屋の夫婦が長期の旅行に出掛けることになった。俺は信頼されているようで、夫婦の息子のゆきとを預かることになった。
実は、俺は催眠を使うことが出来る。
催眠を使い、色んな青年逹を犯してきた。
いつかは、ゆきとにも催眠を使いたいと思っていたが、いいチャンスが巡ってきたようだ。
部屋に入ってきたゆきとをリビングに通して俺は興奮を押さえながらガチャリと玄関の扉を閉め獲物を閉じ込めた。
変態村♂〜俺、やられます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。
そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。
暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。
必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。
その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。
果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
アダルトショップでオナホになった俺
ミヒロ
BL
初めて同士の長年の交際をしていた彼氏と喧嘩別れした弘樹。
覚えてしまった快楽に負け、彼女へのプレゼントというていで、と自分を慰める為にアダルトショップに行ったものの。
バイブやローションの品定めしていた弘樹自身が客や後には店員にオナホになる話し。
※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる