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〖193〗誇り

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「俺たちヨナ民族は、今までいろんな障害や災害にぶち当たってきた。犠牲も付き物だった。その度に数え切れないほどの試行を凝らして、何百何千の年数を繰り返し、乗り越えてきたんだ」


彼は誇らしげだった。


「異邦人の手助けなんかいらない。俺は長として、先祖から引き継いだヨナを守るんだ」


小屋を吹き抜けてゆく風が、全身を撫でてゆく。
包み込まれるような心地良さだった。


「これからも必ずやってけるさ。土地神ツェオスと共に·····」

「·····」


きっと、風通しのよい小屋のせいだろう。
みぞおちの辺りに懐かしいせつなさを感じる。

この島のことなんて知らない。
たった数日前に知ったばかりで、無理やり連れてこられた場所だ。
首を突っ込まず、無関心でいるべきだ。そう思っていた。

彼はもうこちらを振り返らなかった。
広い背中は、とても同じ歳の少年のものとは思えぬほど立派だ。しかしどこか不安げにもみえる彼を支えるように、シオンはそっと、隣へしゃがみ込んだ。

この時は知らなかったのだ。

ヨナ島で進められている、恐ろしい計画を。























月が真上から傾いた頃、青年はおもむろに起き上がった。
ベットのシーツから舞った繊維が、月光に照らされて白い。それよりも透明な輝きをもった蒼銀の髪から朱い瞳が覗いた。

じっと耳を澄ます。
同じ階に、2人の気配。残りの2人はデッキ側の上階だ。
皆一定の呼吸を繰り返している。

ロミオは部屋を出た。

ディアゼルの4人には違う島を教えていた。
彼らに指した島の周りには、小さな列島がいくつも浮かんでいる。

そこから少し離れたヨナ島は、他の離島と違い岩石の山の向こうにある。彼らが自力で見つけ出すにはかなりの時間を要するだろう。

行動を共にするのはここまでだ。
4人は邪魔になる。

船の尻尾位置へ到着する。
ビンゴだ。埃を被ったボートが、柱へ縛り付けられていた。

ここからヨナ島までは、約240キロ。

一日半で到着するだろう。縄を解き終えたところで、ロミオは階段を振り返った。


人の気配が近づいてくる。
こんなに近付かれるまで気が付かないのは初めての事だった。


「感がいいな」


姿を現した男が言う。

計画は変更だ。

ロミオは腰へ手を伸ばした。
一息に処理すれば問題ない。


「けどそのボートは、2人で漕ぐ方が効率が良い」


相手は不敵に笑った。




















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