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〖179〗家族旅行?
しおりを挟む取引を受け入れるまでに、様々な意見の対立があったことだろう。
案内された部屋は、4人部屋にしては随分と広く開放的な間取りだった。
「家族旅行に来たみたいですね」なんて言って笑っているバレンが憎らしい。そっぽを向いた先に、丁度こっちを見ているジェイがいて、シオンは慌てて俯いた。
いや、逸らす必要なんて無かったんだ。思いっきり睨みつけてやればよかったのに、なんでこっちが気まずい思いをしないといけないんだろう。
気がつけば、空はオレンジ色に染っていた。
「長老がお待ちです」
夕食の席は、賑やかな宴状態だった。
民謡に楽器を合わせ、そこに笑い声が交ざる。ここにはシオンたちを歓迎する者しか用意されていないようだった。
「もう1人の方はどちらへ?」
族長が尋ねる。
そういえば、いつの間にかジェイがいない。
「彼は賑やかなところが苦手なんです。お気遣いなく」
テイラーは三日月のような笑みを浮かべた。
「それでは薬は早速、今夜から服用してください。30分もすれば痙攣や引きつけは和らぐでしょう。繰り返し服用する事で完治へ近付きますから、毎日欠かさず服用し、我々は2週間ほど経過を観察させていただきます」
「分かりました。どうかよろしくお願いします」
重々しく頭を下げた長は、妻が伝染病にかかり瀕死の状態だという。
「ええ」
不意に、こちらを遠目に眺めていた装飾の娘たちが、キャアと黄色い声を上げる。
中にはめまいを起こして仲間に支えられる者もいる様子だ。彼女達の熱い眼差しはバレンとテイラーへ一身に注がれ、どっちがタイプやらセクシーやらと物議を醸しているらしかった。
馬鹿げてる。
人々の命さえ脅かす、野蛮な海賊。
そんな彼らが、今は皮肉な程似合うスーツに身を包み、それはそれは偉い慈善事業者として歓迎されている。
弱みに漬け込んで、虎視眈々と核宝を狙っているのだ。
嘘ばっかりだ。
今すぐに、本当のことを暴露してやることだってできる。
なのにどうして、自分を恥ずかしいなんて思ってしまうんだろう。
(きっと)
彼らに犯されたからではない。まるで釣り合わないのに、バレンの求愛を間に受けていたことに気づいたからでもない。
(僕の言葉を、誰が信じてくれるだろ)
王様と奴隷が同じ食卓を囲んでいるみたいな惨めさだ。
「───ところで、あの衣装は?」
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