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苦し紛れに薬を飲み干す。
そして、顔から血の気が引いてゆく。

きっとやばい薬だ。
これから自分はどうなってしまうんだろうか。


「どうですか?」

「ひぃ」


近づいてきた顔が、ぼんやりとぼやける。手のひらが頬を撫でると、皮膚をビリビリした刺激が走った。


「たすけて」


シオンは慌てて彼にしがみついた。
鼓動がおかしなくらい早くなってゆく。
そういえば、呼吸も苦しい。


「息できない」


死にたくない。


「たすけて·····」


必死に訴える。
やがて相手は、ため息をつくように笑った。

(まただ)

滑稽なものを嘲笑うような、心底呆れたような目だ。
この目を向けられると、自分が恥ずかしくて惨めな存在になった気分になる。

いや、実際変わらないのだが、もっとなにか、違う感じがするのだ。

目の前で高い鼻が傾かれる。
頼りなく助けを求めた唇は、少ししめった弾力と密着した。


「んぅ」


驚いて突き出した両手は、意外にも強引に壁へ押し付けられた。

舐め取られるような口付けだ。
溢れ出た唾液は吸い取られて、そっと顎を持ち上げられる。


「ン·····っはぁ·······───ひゃうっ」


1度離れていった唇が、ちゅうと首筋へ吸い付く。
身じろぐも、彼はまるで臆病な小動物を宥めるように、優しくリップ音を落としてきた。


「は·····っン、ゃ·····っ··········ぁ··········」


こんなことしている間にも、薬は体にまわってしまう。
彼は、自分を見殺しにするつもりだろうか。


「たすけてぇ」


情けない声で繰り返す。


「ゃう」


喉仏を舐めた舌が熱い。
見つめ合うと、また唇を掬われた。

涼し気な瞳に似合わず、舌は濃厚に絡み合う。
開いた喉には、生ぬるい空気が送り込まれてくる。

数十秒後には、全身に妖しい熱がともされていた。


「はぁ·····んぅ·····っ·····ン·····」


腰に回った手が、持ち上げるようにしてシオンを引き寄せた。

心地よい。

段々と呼吸の仕方を覚えてきた頃だった。


「·····────!」

「·····しかし────」


廊下の向こうが騒がしい。
小走りと、荒々しい足音だ。

話し声は段々と部屋に近づいてきた。


「お待ちください、代理·····!」


勢いよく扉が開いた。
びっくりして腰を抜かしたシオンは、テイラーに抱き抱えられる。

入ってきたのは、人間離れしてスタイルの良い若者と、その若者のせいで最早豚にしか見えない中年の男だった。


「嫌な予感ほど当たるものはありませんね」


若者が言う。













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