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〖176〗2人のトップ
しおりを挟む苦し紛れに薬を飲み干す。
そして、顔から血の気が引いてゆく。
きっとやばい薬だ。
これから自分はどうなってしまうんだろうか。
「どうですか?」
「ひぃ」
近づいてきた顔が、ぼんやりとぼやける。手のひらが頬を撫でると、皮膚をビリビリした刺激が走った。
「たすけて」
シオンは慌てて彼にしがみついた。
鼓動がおかしなくらい早くなってゆく。
そういえば、呼吸も苦しい。
「息できない」
死にたくない。
「たすけて·····」
必死に訴える。
やがて相手は、ため息をつくように笑った。
(まただ)
滑稽なものを嘲笑うような、心底呆れたような目だ。
この目を向けられると、自分が恥ずかしくて惨めな存在になった気分になる。
いや、実際変わらないのだが、もっとなにか、違う感じがするのだ。
目の前で高い鼻が傾かれる。
頼りなく助けを求めた唇は、少ししめった弾力と密着した。
「んぅ」
驚いて突き出した両手は、意外にも強引に壁へ押し付けられた。
舐め取られるような口付けだ。
溢れ出た唾液は吸い取られて、そっと顎を持ち上げられる。
「ン·····っはぁ·······───ひゃうっ」
1度離れていった唇が、ちゅうと首筋へ吸い付く。
身じろぐも、彼はまるで臆病な小動物を宥めるように、優しくリップ音を落としてきた。
「は·····っン、ゃ·····っ··········ぁ··········」
こんなことしている間にも、薬は体にまわってしまう。
彼は、自分を見殺しにするつもりだろうか。
「たすけてぇ」
情けない声で繰り返す。
「ゃう」
喉仏を舐めた舌が熱い。
見つめ合うと、また唇を掬われた。
涼し気な瞳に似合わず、舌は濃厚に絡み合う。
開いた喉には、生ぬるい空気が送り込まれてくる。
数十秒後には、全身に妖しい熱がともされていた。
「はぁ·····んぅ·····っ·····ン·····」
腰に回った手が、持ち上げるようにしてシオンを引き寄せた。
心地よい。
段々と呼吸の仕方を覚えてきた頃だった。
「·····────!」
「·····しかし────」
廊下の向こうが騒がしい。
小走りと、荒々しい足音だ。
話し声は段々と部屋に近づいてきた。
「お待ちください、代理·····!」
勢いよく扉が開いた。
びっくりして腰を抜かしたシオンは、テイラーに抱き抱えられる。
入ってきたのは、人間離れしてスタイルの良い若者と、その若者のせいで最早豚にしか見えない中年の男だった。
「嫌な予感ほど当たるものはありませんね」
若者が言う。
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