158 / 217
〖155〗曖昧な記憶
しおりを挟む部屋に連行されながら、シオンは誓った。
これ以上は、絶対にジェイの思い通りにはならない。
彼に、自分と同じだけの不幸を与えてやりたい。それを叶えられるのは、彼の望みを叶えられる自分だけだ。
(許さない)
「これが最後だ」
ジェイは告げた。
「ここに残って俺だけのものになると言え」
知れば知るほど、彼はジルとはほど遠い人間だった。
答えは簡単だった。
初めからジルは存在していなかったからだ。
「嫌だ」
シオンは強く言い返した。
「そんなこと、死んでも言わない。望んでディアゼルにいたんだ。僕はもう·····」
もう、彼の操り人形にはならない。
弱いところなんか見せない。
少し背伸びをして、息を吸い込む。
エドワードは責めるかもしれないけど、少しくらい、利用したって許してくれるはずだ。
役に立たない荷物だったが、これから価値を証明すればいい。
シオンは4人を思い浮かべた。
「自分の居場所を見つけたから」
凍てついた空間にしばらく沈黙が続く。
ジェイは少し眉をひそめただけだった。
部屋から逃げ出す前に見たあどけない表情が、嘘みたいに威圧的な雰囲気だった。
彼にはいくつかの顔があるのだろう。
そしてこれこそが本性なんだ。
シオンはそう信じて疑わなかった。
「それなら、思う存分望む通りにしてやる」
ジェイは立ち上がりざま呟いた。
大きな体躯が近付いてくる。思わず目を瞑るが、ふと、渋い匂いが鼻腔を掠めた。
「··········っ·····?」
頭が重い。
ぐらり、と、歪んだ体を受け止められる。
「やれ」
ジェイの命令とともに、ぼやけた視界の先で扉が開いた。
入ってきたのは2人組だ。
「いくら任務といえど、同じ顔の男を見ながらでは捗らないんですけど」
間延びした男の声が言う。
これはバレンだ。
少し不服そうな彼に対して、もう一人の男が呆れたようにため息をついた。
「同感ですが、1人には任せられないでしょう」
「俺一人で十分っすよ」
「お前だけじゃエルの身が危険ということだ」
「用済みになったからって利用したレディーを絞殺した人間に言われたくないっすね」
(なんの話·····?)
身体が熱い。
意識はある。声も聞こえているのに、内容が頭に入ってこない。
生暖かい湯の中にいるみたいだ。
ぼんやりした視界から、ジェイが遠ざかってゆく。
彼は扉の向こうへ消えたきり、戻ってこなかった。
「光栄な任務です」
それからの記憶は曖昧だ。
「服は抜いじゃいましょうね~」
0
お気に入りに追加
953
あなたにおすすめの小説
夏休みは催眠で過ごそうね♡
霧乃ふー 短編
BL
夏休み中に隣の部屋の夫婦が長期の旅行に出掛けることになった。俺は信頼されているようで、夫婦の息子のゆきとを預かることになった。
実は、俺は催眠を使うことが出来る。
催眠を使い、色んな青年逹を犯してきた。
いつかは、ゆきとにも催眠を使いたいと思っていたが、いいチャンスが巡ってきたようだ。
部屋に入ってきたゆきとをリビングに通して俺は興奮を押さえながらガチャリと玄関の扉を閉め獲物を閉じ込めた。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
変態村♂〜俺、やられます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。
そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。
暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。
必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。
その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。
果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
アダルトショップでオナホになった俺
ミヒロ
BL
初めて同士の長年の交際をしていた彼氏と喧嘩別れした弘樹。
覚えてしまった快楽に負け、彼女へのプレゼントというていで、と自分を慰める為にアダルトショップに行ったものの。
バイブやローションの品定めしていた弘樹自身が客や後には店員にオナホになる話し。
※表紙イラスト as-AIart- 様(素敵なイラストありがとうございます!)
不良少年は可愛がられるだけのペットになりました
霧乃ふー 短編
BL
別邸の地下に今日も向かう。
そこにいるのはこの間買った不良少年だ。親に見放されて闇で売りに出された少年をペットとして今日も可愛がることにする。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる