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〖155〗曖昧な記憶

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部屋に連行されながら、シオンは誓った。

これ以上は、絶対にジェイの思い通りにはならない。

彼に、自分と同じだけの不幸を与えてやりたい。それを叶えられるのは、彼の望みを叶えられる自分だけだ。

(許さない)


「これが最後だ」


ジェイは告げた。


「ここに残って俺だけのものになると言え」


知れば知るほど、彼はジルとはほど遠い人間だった。

答えは簡単だった。
初めからジルは存在していなかったからだ。


「嫌だ」


シオンは強く言い返した。


「そんなこと、死んでも言わない。望んでディアゼルにいたんだ。僕はもう·····」


もう、彼の操り人形にはならない。
弱いところなんか見せない。

少し背伸びをして、息を吸い込む。

エドワードは責めるかもしれないけど、少しくらい、利用したって許してくれるはずだ。
役に立たない荷物だったが、これから価値を証明すればいい。

シオンは4人を思い浮かべた。


「自分の居場所を見つけたから」


凍てついた空間にしばらく沈黙が続く。
ジェイは少し眉をひそめただけだった。
部屋から逃げ出す前に見たあどけない表情が、嘘みたいに威圧的な雰囲気だった。

彼にはいくつかの顔があるのだろう。
そしてこれこそが本性なんだ。
シオンはそう信じて疑わなかった。


「それなら、思う存分望む通りにしてやる」


ジェイは立ち上がりざま呟いた。
大きな体躯が近付いてくる。思わず目を瞑るが、ふと、渋い匂いが鼻腔を掠めた。


「··········っ·····?」


頭が重い。
ぐらり、と、歪んだ体を受け止められる。


「やれ」


ジェイの命令とともに、ぼやけた視界の先で扉が開いた。
入ってきたのは2人組だ。


「いくら任務といえど、同じ顔の男を見ながらでは捗らないんですけど」


間延びした男の声が言う。

これはバレンだ。

少し不服そうな彼に対して、もう一人の男が呆れたようにため息をついた。


「同感ですが、1人には任せられないでしょう」

「俺一人で十分っすよ」

「お前だけじゃエルの身が危険ということだ」

「用済みになったからって利用したレディーを絞殺した人間に言われたくないっすね」


(なんの話·····?)


身体が熱い。
意識はある。声も聞こえているのに、内容が頭に入ってこない。
生暖かい湯の中にいるみたいだ。

ぼんやりした視界から、ジェイが遠ざかってゆく。
彼は扉の向こうへ消えたきり、戻ってこなかった。


「光栄な任務です」


それからの記憶は曖昧だ。


「服は抜いじゃいましょうね~」












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