海賊団に攫われた貧民〖イラストあり〗

亜依流.@.@

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〖127〗予期せぬ先客

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「別に·····この餓鬼が誘ってきたから、軽く虐めてやろうとしてただけ」


エドワードがヤレヤレと首を振る。

誘ってなんかいない。
言い返したいが、報復が怖い。

リアムの背後にそっと寄ると、マゼンタの瞳は更につり上がった気がする。
優しくしたり、怖い顔をしたり、なんなんだろう。
シオンにはエドワードが理解不能だった。

そんな彼をまるきり無視して、リアムが軽くかがみ込む。


「?」


皮の手袋を外した手が、髪の毛をかき分け、額に押し付けられた。
冷たくて気持ちいい。
思わず息を着く。


「飲め」

「?」


差し出されたのは青の小瓶だった。


「これ、なに?」

「悪いもんじゃねえ。解毒薬だ」


飲みやすいようにと、コルクの蓋を捻ってくれている。
シオンはそれを一気に飲み込んだ。

とても苦い。
むせているうちに取り上げられた瓶は、底の見えない崖へ投げ捨てられた。
地面に割れる音は聞こえなかった。

エドワードがいじめっ子なら、リアムはちょっと怖い兄みたいな感じだ。
斜め前を進む綺麗な横顔を見上げていると、赤い瞳がチラとこちらを見やった。

怪我とかは無いのだろうか。
ここまではどうやって来たんだろう?
勝手に行動したことを、怒らないのだろうか。


「無事だったことは褒めてやる」


冷たい声が言った。けして言葉通り褒められているわけではないのが理解出来た。


「ごめんなさい」

「あのさぁ、謝るなら俺じゃね?」


エドワードがわざとらしいため息を着く。


「貴重なタマを無駄撃ちさせてごめんなさいってさぁ」

「無駄撃ち·····」


呟いたシオンは、やっと意味を理解してうろたえる。
下品な発言だ。
リアムがいるのに。両手を握りしめ、熱くなった目頭に力を入れる。

こんな男を、毒のせいでも好きだと思ってしまったなんて、何かの間違いだ。

進む方向から冷気が流れてくる。
思わず身震いして、置いていかれないように、せっせこ足を動かす。

暫く歩くと、岩の地面に光鉱石が混ざり始めた。

進むにつれて、周りが明るくなってゆく。
足元は純粋な光鉱石だけになっていた。

突如、視界が開けた。


「········!!」


水色に輝く空間が広がっていた。
直径50メートルくらいの、広い空間だ。
まるで、光を集めた深海にいる気分になる。

岩場をいくつか超えた中央に、小高い丘があった。
周りは一際輝く光鉱石に覆われている。

その上に、先客がいた。


「あいつは··········」










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