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〖126〗噛み跡
しおりを挟むしばらく状況を分析する。
自分を大層嫌っているエドワードにあろうことか「好き」なんて言ってしまって、そして今、キスされている。
「????」
なぜだ?
唇を舐め取られて、また舌を吸われる。
高い鼻が頬を掠めた。
「んう·····っ」
恥ずかしい快感が口内に広がる。
戸惑ってしまうほど優しいキスだった。
息を吸おうとして大きく口を開けると、更に奥へ舌を差し込まれた。
「ン、ぅん·····」
一度唇が離れる。
ほっとしたのも束の間だった。
「ひゃうっ」
首筋に噛み付かれたのだ。
何度か、同じような場所を噛まれる。
痛いはずなのに、ゾクゾクして変な感じだ。
(気持ちいい·····)
「エドワード··········ぁ··········っ」
逃げようとすると、膝の上に乗せられたまま、壁に追い込まれてしまった。
「構って欲しかったんだよね?」
「ひゃ·····っ」
わざとらしいほど猫なで声が耳元で囁き、吐息を落とす。
しかし、頬を撫でる指先は覚束無い。
「望み通りにしてあげるよ」
見上げると、また口を塞がれた。
「はふっ」
胸元を押した手は取り上げられて、指を絡ませられる。
口の中だけを蹂躙され、舌先はなぞられる度に敏感になってゆく。
執拗に追いかけ回すみたいなキスだった。
至近距離で目が合うと、相手の瞳にはうろたえた自分が映っていた。
恥ずかしい。
頬が熱い。体も熱くてたまらない。
「ゃ·····っ·····」
傾かれた相手の顔の口元を、手のひらで覆う。
「恥ずかし·····ぁ·····ん·····っ」
シャツを崩されて、裸の肌に指が滑る。
引き寄せられた腰は、骨が抜けたみたいに歪んだ。
なんで、こんな触り方するんだろう。
新しいイジメの仕方でも確かめられてるのだろうか。
(でも、気持ちい····)
「エドワード·····っ·····や·····」
自分でも驚くほど、弱々しい声が漏れる。
触れるだけのキスにリップ音がまざる。あやしい雰囲気に抗うことも出来ず、声を押し殺した時だった。
「·····何やってんだ、お前ら」
「!?!?」
突如、新しい声が崖に響いた。
シオンは飛び上がった。
振り返った道にいたのは、冷たく燃える赤髪。
精悍な顔立ちは、たちまち限界までしかめられた。
「あっ」
上から首根っこを持ち上げられて、体が宙に浮く。
立たされるが、足元がおぼつかない。
反射的にリアムにしがみついてしまった。
「おい、気でも狂ったか?」
シオンを抱きとめたリアムがエドワードに問う。
「はっ」
エドワードは地面に唾を吐き出して、無言のまま立ち上がった。
自分からキスしてきたくせに、酷い反応だ。
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