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〖122〗確信

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バニー服を着た少年がせっせこと酒を運んでいる。
シオンがあんな姿をしていたら、きっと素晴らしく愛らしいだろう。

白い肌には、どんな印が似合うだろうか。
ほかの男の元へ行けぬよう、名前を掘って、ヴィンセント家の紋章を焼き付けてもいいかもしれない。

(·····いいや、果実のような身体に物で傷を付けるなど、あまりにも不遜だ)

ヴィンセントは首を振った。
尻尾をつけた桃尻は、愛情込めて素手で叩いてやるのが1番に違いない。

真っ赤に染った尻を優しく愛撫し、雄をねだる蕾を更に焦らしてやるのだ。
いずれシオンは、必ずこの自分を愛するだろう。

下半身がずくりと重くなる。
正しく彼は、この自分の大海原を潤す天使だ。


「見て、あそこの紳士様、すごく格好いい」


囁きの方を見やると、カウンターの向こうにいたバニーボーイが黄色い声を上げた。
歳の割にませた少年たちの視線が、誘惑するようにこちらに絡みつく。

彼らは金持ちの男がいつか自分達を身請けしてくれると夢に見ている。
そして欲を言うならば、見目麗しい若い男。

身の程をわきまえない発想だが、昔はああいうのを苛めるのもそれなりに楽しかったはずだ。
今はなんとも思えなくなっていた。


「ご希望のタイプはございますか?」

「では·····黒髪に黒い瞳の少年はいるか?肌は白魚のようで、艶めかしく愛らしい身体の」

「黒目に黒髪、肌は白」


支配人がオウム返しにつぶやくのを聞きながら、ヴィンセントはため息をこぼした。

色白の肌に黒髪黒目。今までそれをもちあわせていたのは唯一一人。
いたとしても、シオンでなければ、それはなんの意味もなさなくなる。
だから希望通りの商品など、ここには売っていない。


「·····申し訳ありません、実はご希望に合ったスタッフが、丁度、他のお客様に身請けしていただいたばかりでして·····」


支配人の返答は予想とは違っていた。


「·····いつだ?」

「つい二、三時間ほど前です」

「歳はどのくらいだ?いつ館に来た?」

「ええと·····」


支配人の目が泳ぐ。


「確か、数日前に来たばかりの新人です。なので、まだ私もよく知らず·····15くらいでしょうか?」


ドクドクと、血液の流れる音がする。


「高貴な方の間では、そういった少年が流行りなのですか?ハハ·····」


相手がこちらの顔色を伺うように笑みを作る。

予感は確信へと変わった。

この国へ来たのは間違いではなかった。
やはり、シオンが自分を呼んでいたのだ。


「ああ、直ぐに迎えに行くよ」


どこか魂の他所に行った紳士は、毅然とした様子で館を後にしたという。



























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