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〖119〗出会い
しおりを挟む「クレイ!」
五人と対峙しているクレイの背に回る。
「ここは任せろ。お前はバレンの相手だ」
仮面の男の佇まいには一切の油断もない。
彼は別格だ。リアムは逡巡したクレイをふりかえった。
「早くしろ」
「·····わかった。ここは頼んだ」
自分自身とリアムとの戦闘能力の差を受け入れている。しかしこういう時、生まれ持った才能の差を思い知らされるのだ。
クレイはバレンの足止めに向かった。
けむりの中から出てきたのは、いつか酒屋で会った男だ。
あの時の既視感を、やっと理解する。
彼の体つきだ。
無駄の無い筋肉に、動作や視線まで。彼らは、リヒトとリアムによく似ている。
クレイのこめかみを、嫌な汗が流れた。
リアムは襲いかかってきた三人を一刀両断し、仮面の男と向き合った。
「成程、そういう訳か」
焼けた肌にエメラルドの瞳を持つ、醜い男。
彼は醜い顔を隠すため、鋼の仮面を被っているという。
───若きパンドラの船長、ジェイ。
恐らく、目の前にいるこの男だ。
2人はコンマ1秒見つめ合う。
やがて先に動いたのは、ジェイだった。
「ぐえっ」
瞬きをする間もない、一瞬の出来事だった。
彼の背後に待機していた男達の首が飛ぶ。
黒いローブから躍り出たナイフが、血を滴らせながら地面に弾き落ちた。
「·····」
リアムはチラと掲示板を見上げた。
残りの人数は、10人。
仮面の男を囲んでいた挑戦者たちは、誰一人として動揺の色を見せない。
初めからジェイは、自分の手下を殺し、市民権を獲得するつもりでいたのだ。
〈ヴォーーーーーーン〉
サイレンの音が、一際大きく鳴り響く。
試合終了の合図だ。
フィールドを出ようとしたリアムは素早く地面に伏せた。
鋭いカッターナイフが地面に赤い花を咲かせる。
ジェイの周りにいた男たちの首が飛ぶ。胴体は、まるで糸の切れた人形のように、地面に倒れ込んだ。
「1人くらい始末したかったんすけど·····仕方ないんで、整理整頓です」
バレンが、余ったナイフをくるりと回す。背後から顔のそっくりな男が姿を現した。
"整理整頓"
今後に必要が無いと判断すれば、仲間すら殺すことも厭わない、パンドラの狂犬こそが彼らだ。
市民権を獲得したのは6人。
ここに、史上最悪のメンバーが集結した。
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