海賊団に攫われた貧民〖イラストあり〗

亜依流.@.@

文字の大きさ
上 下
121 / 217

〖119〗出会い

しおりを挟む




「クレイ!」


五人と対峙しているクレイの背に回る。


「ここは任せろ。お前はバレンイカレ野郎の相手だ」


仮面の男の佇まいには一切の油断もない。
彼は別格だ。リアムは逡巡したクレイをふりかえった。


「早くしろ」

「·····わかった。ここは頼んだ」


自分自身とリアムとの戦闘能力の差を受け入れている。しかしこういう時、生まれ持った才能の差を思い知らされるのだ。

クレイはバレンの足止めに向かった。

けむりの中から出てきたのは、いつか酒屋で会った男だ。
あの時の既視感を、やっと理解する。

彼の体つきだ。
無駄の無い筋肉に、動作や視線まで。彼らは、リヒトとリアムによく似ている。

クレイのこめかみを、嫌な汗が流れた。






リアムは襲いかかってきた三人を一刀両断し、仮面の男と向き合った。


「成程、そういう訳か」


焼けた肌にエメラルドの瞳を持つ、醜い男。
彼は醜い顔を隠すため、鋼の仮面を被っているという。
───若きパンドラの船長、ジェイ。

恐らく、目の前にいるこの男だ。
2人はコンマ1秒見つめ合う。
やがて先に動いたのは、ジェイだった。


「ぐえっ」


瞬きをする間もない、一瞬の出来事だった。
彼の背後に待機していた男達の首が飛ぶ。
黒いローブから躍り出たナイフが、血を滴らせながら地面に弾き落ちた。


「·····」


リアムはチラと掲示板を見上げた。
残りの人数は、10人。
仮面の男を囲んでいた挑戦者たちは、誰一人として動揺の色を見せない。

初めからジェイは、自分の手下を殺し、市民権を獲得するつもりでいたのだ。


〈ヴォーーーーーーン〉


サイレンの音が、一際大きく鳴り響く。
試合終了の合図だ。


フィールドを出ようとしたリアムは素早く地面に伏せた。
鋭いカッターナイフが地面に赤い花を咲かせる。

ジェイの周りにいた男たちの首が飛ぶ。胴体は、まるで糸の切れた人形のように、地面に倒れ込んだ。


「1人くらい始末したかったんすけど·····仕方ないんで、整理整頓です」


バレンが、余ったナイフをくるりと回す。背後から顔のそっくりな男が姿を現した。

"整理整頓"
今後に必要が無いと判断すれば、仲間すら殺すことも厭わない、パンドラの狂犬こそが彼らだ。


市民権を獲得したのは6人。

ここに、史上最悪のメンバーが集結した。






















しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...