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〖110〗ユートピア
しおりを挟むそう言ったのは、3人組の中で恐らく最も年長の男だ。
彼らは通りかかった適当な少年に声をかける。
呼び止められた少年は彼らとともに奥の部屋へと消えていった。
「VIPのお客様に、なんてことを!」
シオンはボーイに腕を引っ張り上げられ、控え室へ押し込められた。
電気の着いていない部屋に押し込まれ、床にたたきつけられる。
「んう"っ!」
背中に鋭い痛みが走った。
それが、二度、三度と続く。
シオンは悶え叫んだ。痛みが止んだ頃には、背中は燃えるように熱かった。
「奴隷の分際で·····」
シオンは耳を疑った。
奴隷。
本当にここが、ユートピアと呼ばれたオルトンの内側ならば、ありえない単語だったからだ。
壁の内側は権力社会に塗り固められている。1部の権力者が甘い蜜を吸い、それ以外はまるで道具のように扱われている。
まやかしだったのだ。
「大変だ」
廊下の向こうから男の叫び声がした。
「支配人、どうしましたか?」
シオンを叱り付けていたボーイが聞く。扉の前で立ち止まった男は、酷く慌てた様子だった。
「太客様だ。100トールの寄付をくださった」
「なんですって?」
100トール。
貴族の屋敷を丸々ひとつ買っても釣りが来る金額だ。
「条件があるんだ。なんとしてでも、それに合うスタッフを探さないと。黒髪に黒い瞳で、白い肌の───」
支配人と呼ばれた男が、ふとこちらを見る。
「───いるじゃないか!」
彼はこちらへズカズカと近づいてきて、シオンの腕を引っ張り上げた。
「?」
「今すぐ、着いてきなさい」
「しかし支配人、彼は"躾"を施したばかりで·····」
ボーイの男がバツが悪そうに口を挟む。支配人は舌打ちを落としたものの、構わない、と、シオンの腕を掴んだまま歩き出した。
「いいか、決して粗相はするな。ただ媚びて、奉仕しろ」
奥の廊下を進みながら、支配人は繰り返しシオンに言った。
「もし次ヘマをしたらさっきの罰では済まないからな」
逃げることは出来ない。
そして言う通りにしなければ、命はない。
上手くやるしかない。
シオンは不安を押し殺し頷いた。
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