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〖109〗バニー
しおりを挟む傍観席のチケットは既に完売で、ドームの周りにも人だかりができている。
残りは20人、その中には、パンドラの2人組もいるだろう。
彼らを始末する時が来た。
リアムは来た道を引き返した。
シオンは周りに流されるまま、バニーの衣装姿で地下を右往左往していた。
この数時間で、だいたいの状況が飲み込めた。
どうやらここは、ゲームやバーが融合した娯楽施設らしい。
少年達は接待サービスをするスタッフ。彼らは労働者として五年働くこと、そして定められた納金をすることで自由な暮らしを手に入れることが出来る。
その中でも、この施設で働く子供たちは、既に両親の亡くなった孤児らしい。
地下はスタッフの控えで、一階から三階が娯楽施設だ。シオンは、一階の掃除や会場のセッティングをさせられた。
逃げ出す機会をうかがっていたが、建物内の警備は思った以上に硬かった。
その上、誰かがミスを犯せば連帯責任。どうすることも出来ないうちに、外の陽は暗くなっていった。
開店の音楽とともに、店内は騒がしくなってゆく。
客は身な男で、若者から老人まで幅広い世代だった。
彼らは品定めするようにスタッフを眺めては、気に入った少年をそばに置く。
初め分からなかったシオンも、様子を見ていくうちだんだんと用途を理解してゆく。
客の手が、少年たちの体を撫で回し、時にはその逆も行われる。
ここは、こういう店なんだ。
シオンは見習い用の雑巾を片手に、思わず会場から背を向けた。
「おや、こんな子がいましたかな?」
不意に、肩に手を置かれる。
シオンは飛び上がった。
中高年の男3人組だ。彼らの側に立っていたボーイが、こちらをチラと見て、一瞬訝しそうな顔をした。
誰だっけこいつ、とでも言いたげな表情は、客を振り返る頃にはニコニコと笑みを貼り付けた。
「ええ、入ったばかりの新人なんです」
「貧相な体つきだが、上物だな」
どれ、と、腰に手を回される。
「!」
シオンは伸びてきた腕を振り払った。
手のひらがヒリヒリと痛む。強く叩きすぎたようだ。
その場はしんと静まり返り───1秒後、ボーイは勢いよく土下座した。
「申し訳ありません!!どうかお許しを!!」
「·····?」
突然触ろうとしてきたのはそっちだ。
どうして店側が謝る必要がある?
必死な様も尋常ではない。
周りの者達は遠巻きにこちらを眺め、しかし直ぐに各々の遊びに戻っていった。
「おい!」
床に頭をつけたままのボーイが、シオンを呼ぶ。
「お前も、早く頭をつけろ!」
「いや、いや、気にする事はない」
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