96 / 217
〖94〗狙い
しおりを挟む公の理由として、内側に旅人を受け入れるのは、身内婚による障害児の出産を避けるためとなっている。
しかしそれはオプションに過ぎない。
真の狙いはコロシアムでの大量虐殺にあった。
始まりは、オルトンの歴史を遡ること数百年前。
その昔、国は資源豊かな土地だった。
ある年、次期王を巡り2人の王子が激しく対立し合う。慈悲深く知的な長男、明るく正義感の強い次男は、それぞれ国を思うが故に、意見のすれ違いを機に分裂してゆく。
王が病に伏すと、それから7年間、激しい戦争が続いた。
たくさんの命が犠牲になってゆく中で、ある人物は土地の異変に気づく。
自堕落な三男だった。
戦争中の7年間は、国の外側でたくさんの兵士が戦死してゆく中、内側は不思議な程潤っていった。
気候は常に暖かく、食べ物は底を尽きない。働かずして食にありつくことが出来れば、暇を持て余した人々は贅沢を追求するようになる。
遊び呆けていた第3王子には不思議な力があった。
死んだ者の魂を見る力だ。身体が息絶えても、魂は消滅しない。ある一定の道筋に沿って流れてゆく魂炎に興味を持った第3王子は、それを追いかけ、国の核に辿り着いた。
やがて"推測"は核心へと変わった。
彼は実の兄である第1王子、ついで第二王子を暗殺し、王位継承を果たした。
残虐な王は、国を二極化した。
高い堤防を建て、"核"に近い土地には裕福な者、美しく若く健康な男女、その子供というように、内側に住む市民を選んだ。
壁の外側には老人や貧しい民が追いやられた。
そして下層から順に、虐殺が行われた。
土地は生きている。魂を吸収し、肥えるのだ。
国内の犠牲にもいずれ限界が来る。
オルトンでは新しい市民の受け入れを条件に殺し合いが行われるようになった。
一攫千金のチャンスと言っても過言でないこの争いは、旅人たちを集めるには十分すぎるフィールドだった。
「···そこで攫ってしまおうかとも思いましたが···時期的には、まだ早いかと」
「そうなんすよ。力ずくが駄目だって言うんでいいムードまで持ってったんすけど···くっ···ふふ···」
深夜、街灯の明かりさえ消えた街の路地裏に、3人の男の影が浮かびあがった。
「ボス、あの少年は·····」
未だ思い出し笑いを繰り返すバレンへ呆れたような横目をなげつつ、テイラーは1度言葉を切る。
遠くを眺めたままの青年は、どこか上の空だ。
「あ、そういえばボス」
思い出し笑いを止めたバレンが、形の良い顎へ人差し指を添えた。
「トーナメントの参加者の中に手応えありそうな奴が数人いたんですが、あれはボスの知り合いっすか?でなければ…」
1
お気に入りに追加
956
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる