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〖56〗不気味な青年

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「違ぁう!!」


のどかな昼下がり、男はとうとう机を叩きつけた。

紳士な身なりに、知的な美貌を持った男だ。
机を挟んで並べられた数十人の少年から小さな悲鳴があがる。


「黒髪に黒い瞳、10代半ばの少年だと言った筈だ。一体何だこの──汚らわしい蛆虫共は!」


嫌悪を隠さぬ声の主は、世界有数の資産家ヴィンセント家の当主である。


「お前の目は節穴か?くり抜いてビー玉でも詰めた方がよっぽど愉快だぞ」


冷たい碧眼が細められる。ヴィンセントの隣で手をこすり続けていた男の顔から、冷や汗が滴った。


「ど、ど、どうかご慈悲を·····」


「喧しい!ロミオ!」


影から1人の男が姿を現す。

スラリと細身の長身で、歳は10代後半から20代前半程。
輝くような水銀髪からは真っ赤な瞳が覗く。どこか不気味な青年だった。


「この役立たずを海へ投げ捨ててこい」


ヴィンセントの命令を聞き終わるや否や、彼は無造作に中年の男へ近づいた。


「な·····く、くるな····!───もごっ」


言葉は続かず、口元は青白い手に塞がれる。
男の足を、空いた青年の手が受け止める。次の瞬間、バキ、と、割れるような音がした。

関節は変な方向に向き、くぐもった呻き声を最後に、男は動かなくなる。

ロミオ──そう呼ばれた青年の表情は微動だにしない。
泡を吹いて気を失った男を持ち上げたまま、彼は部屋をあとにした。


「彼は···もしや、あの?」


透けるような蒼銀髪───史上最強の戦闘民族、バイモンの末裔の証だ。

ヴィンセントは満足気に頷いた。


「高かったんだ」


幼い頃から訓練を受けてきた奴隷は、バイモンの中でも稀にいない血統書付きである。

あの赤髪の男の息の根を確実に止めるのだ。
ヴィンセントはそっとほくそ笑んだ。


















────因縁の出会い────


















閉じかけた足首は、熱い手に捕まえられた。


「あっ」


リアムだ。
腕はベッドの上でこちらの身体を反転させ、自身の方へと股を開脚させる。


「ひくつきが、まるで女のようだろう」


リヒトの声には返答がない。
恥ずかしさと驚きが相まって、シオンは目の前の男から目を逸らした。


「お前ってやつは···」


リヒトがシオンの足先へ口付けを落とす。


「乱暴にするなよ」


軽く捻った足首がじんと痛む。それなのに、挿入だけを目的とした強引な態度は、求めていると錯覚させられてしまう。
鼓動は壊れそうなほど煩かった。


「ひゃん···っ?」


後ろへまわったリヒトが、悪戯にシオンの首筋へ吸い付く。
彼は何度もわざとらしいリップ音を響かせた。


「あっ···だめ、·····っ♡ひぅ·····──ああっ!?」




  



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