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〖41〗倉庫
しおりを挟む倉庫には先代から継がれてきた物品や、保存食が置かれている。
そんな場所を巫山戯た用途で汚されてはたまらない。
ズカズカと中へ入ってゆくリアムの背に、エドワードがため息を着いた。
「デリカシーのカケラも無い奴だな」
「他人の事を言える立場でもないだろう」
リヒトが笑う。
エドワードは軽く首を振り、部屋の中に進んだ。
一瞬感じた酷い嫌悪感の正体は分からなかった。
「はぁ?」
部屋の奥へ進んだ彼は、予想と違う光景に、思はず素っ頓狂な声をあげた。
置物の下敷きになったシオンがうつ伏せに寝転がっている。
こちらへ背を向けていたクレイが振り返った。
「全員揃って、どうかしたのか?」
事の発端は数分前。
船内を探索していたシオンが船内奥の倉庫をみつけ、好奇心から侵入。シオンが中へ入ったのを見かけたクレイがその後を追い、クレイの足音に驚いたシオンが散らかった足場を踏み外し転倒。
結果、先程の状況になったというわけだ。
「幽霊とかだと思ったから···」
弁明はエドワードの笑い声にかき消される。
シオンは不服そうに頬をふくらませた。
「まじで餓鬼」
クレイは呆れたように首を振り、リヒトもふっとため息をつく。
すっかり笑いものだ。
「笑い事じゃねぇよ」
冷たい声が、呆れ返った場の温度を下げた。
ハッとして声の主を見る。
机へ足を投げ出したリアムが、不愉快そうにこちらを睨みつけている。覗いた鋭い犬歯は、今にも噛みつきそうな狼を思わせた。
「あの中の物品ひとつでも壊してみろ。お前の臓器全部売り払っても足りねぇぞ」
おぞましい台詞はとても冗談には聞こえない。
シオンは震え上がった。
「わぁ、怖い顔」
エドワードの間延びした声が、静かになった部屋をかろうじて励ますように聞こえる。
舌打ちをしたリアムの横顔は、無人島での出来事を白昼夢だと思わせる程冷たかった。
「ご、めんなさい···」
下唇を噛み、俯く。
「そう怒るな」
リヒトが宥める。
リアムは口を閉ざしたきり何も言わなくなってしまった。
「てかさぁ」
エドワードが、こちらへ面倒そうな視線を向ける。
「こいつどうすんの?」
「?」
突然、なんの話だろうか。
他の3人は顔を見合わせ、今一度こちらを振り返る。
「·····??」
「コロシアムの強制参加は十五以上。この見た目なら十四で通るんじゃないか?」
「ギリギリってとこだな」
「万一引っかかったら面倒だ」
3人が口々に話し出す。
「な、なんの話?」
口を挟んだシオンの声はとことん無視された。
「いい案がある」
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