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〖33〗夜空の無人島

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「ここには来たことがある」


海の向こうを眺めていたリアムが、独り言のように話し始めた。


10の頃、大きな失態を犯し、島流しにされた。
1杯の水だけを手に連れられたのが、この無人島だったそうだ。


「蔵があんだ」


前ディアゼルの船長が、若かりし頃に地下へ作った酒溜。
リアムは残った酒を飲み干し、夜空を仰いだ。


「俺の運が、お前を救ったんだぜ」


不敵な笑みは遥か遠くを見据えていた。

リアムは強運の持ち主だ。
神に愛された人間がいるとすれば、それは彼のような者を指すのだろう。


今日のリアムはどこか棘が少ない。

無人島に二人きり。しかし、今後の不安は、全く感じられなかった。


「2日もすれば、アイツらがこの島を見つける」


そう言って酒のボトルを海へ投げたリアムも、この先の事など何ら心配していないようだ。

彼はシオンを責めることは無かった。

また助けられてしまった。

この前は、絶望の縁にいた心を。
そして今回もまた、彼の強い力に、助けられたのだ。


「助けてくれて、ありがとう」


逃げなければと思った時、彼らのことを思い浮かべていた。
おかしな事だ。自分をさらい、故郷と家族を奪った仇の一味だというのに。

ジルだけを頼りに生きていた。

彼らと出会って、初めて息をしている感覚がしたのだ。


「助けただって?」


勘違いすんなと、目が覚める程冷たい声が、シオンの言葉を一蹴した。


「お前は利用価値があるから連れ戻しただけだ。使いもんにならねえなら、すぐにでも捨てる」


彼らにとって、自分は宝を探すための道具でしかない。

シオンは下唇を噛み、俯いた。


「お前の役割を果たせ」


掠れた声が、潮風に乗って鼓膜を揺らす。

ディアゼルに受け入れる。そう、言われた気がした。


「·····」


リアムはじっと海の向こうを眺める。
黙ったままのシオンは、暫くして鼻をすすり始めた。

濃縮された酒の匂いのおかげで、いくらか気分が良い。


港に着いてからシオンを連れ戻せばよかったのに、無駄な怪我を負う羽目になった。

しかもこいつは、聞くに絶えない戯言を口にし、グズり出す始末。

餓鬼は嫌いだ。

隣の子供体温が、息を吸い込む度に近づいたり離れたりし、眠たくなってきたのか、少しずつこちらへ体重を預けてくる。
呼吸は吃逆のせいで不規則だ。
もはや、突き放すことも面倒くさい。

リアムは諦めるように瞼を閉じた。



















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