海賊団に攫われた貧民〖イラストあり〗

亜依流.@.@

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〖26〗牢屋

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初めに、ジメジメとした不快感を覚えた。


「んん·····」


頭を打ったのか、後頭部に鈍い痛みがある。
ぼんやりと目を開け、しばらくすると、薄暗い向こうに鉄格子が見えた。

そこはかび臭い牢の中だった。
周りを見回したら、自分と同じく手足を拘束された男達が座り込んでいる。

地面が鈍く揺れる。
シオンは吐き気を飲み込んだ。
孤児と間違えられ、奴隷商人に攫われたらしい。

恐らく、商貨物船の中だ。


「···それで、珍しい目の色をしてる商品とは?」


突如、天井からガシャンと大きな音が響いた。

牢の向こうに光が差し込んだ。
外に繋がる扉が開いたのだ。
上階に繋がる階段から、二人の男が姿を現した。

1人はシオンを攫ったガタイの良い男。
もう1人は、ここには似つかわしくない、20代後半程の紳士だった。

クリーム色の髪を後ろへ撫でつけ、小綺麗な服に身を包んだ男だ。
整った顔立ちだが、知的な碧眼はどこか冷たい。


「汚らわしい·····」


彼は憎々しげに呟いた。


「この僕に足を運ばせておいて、またスラムのゴミでも見せてみろ。お前の血肉を豚共の餌にしてやる」


おぞましい台詞を吐き捨てた男に、大柄な男は慌ててこちらへ向かってきた。


「ったく···この靴はもう使えないな···」


新品同様の革靴なのに、一体何を言っているのだろう。
金持ちの考えることは分からない。シオンが首を傾げたとき、牢の鍵が開く音がした。

天井からは忙しない足音、部屋の端にはそれぞれ見張りがいる。
逃げ出すのは無理そうだ。

紳士が牢の中を見渡すのを眺めていたら、引き寄せられるような視線が、不意にこちらへ投げられた。

視線が絡み合う。
逸らすより先に、突如、強い力に腕を引っ張られた。


「·····っ!」


シオンは大きな男にかつがれ、牢の外へと引きずられた。


「瞳の色が黒、身長155、体重42、推定年齢は14の少年です」


違う、16だ。訂正したいのを耐え、首根っこを掴まれたまま大人しくしておく。

「·····。」


目の前にいた背の高い紳士は、こちらを凝視したまま微動だにしない。


「ええと···いかがでしょうか、ヴィンセント様」


中年の男が、相手の顔色を窺うように背を丸める。


「·····この少年は、どこから?」


紳士がうわごとのように問う。
さっきの神経質な感じとは、打って変わって穏やかな声だ。
碧眼はその間もシオンから視線を離さなかった。


「つい先程のモンシュタット島ですが···産まれは、おそらく南の方かと···」


曖昧な返答を気にするふうもなく、ヴィンセントと呼ばれた男の手が、こちらへ伸びてくる。
大きな手のひらが、裸の腿へ触れる。


「!や·····」


思わず振り払うと、カシャン、と鋭い鎖の音が鳴り響いた。


「お前、誰に向かって·····!!」

「構うな」


怒鳴りかけた男の声はヴィンセントに遮られた。


「しかしヴィンセント様·····」


シオンは恐る恐る相手を見上げる。














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