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〖18〗稽古
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受け取った短剣は思いのほか重い。
シオンは何度か瞬きを繰り返した。
閃いて、それを渡してきた男を見上げる。
「料理用のナイフ?」
「ぶっ」
後ろから吹き出すような笑い声が聞こえた。
振り返ると、壁によりかかったエドワードが、片手で口元を押さえている。
「あっ···ははは、あ~苦しい、勘弁してよほんと」
彼はわざとらしく苦しそうな呼吸を繰り返した。
馬鹿にされるような言動をしたつもりは無い。
「·····違う」
ぶすくれたシオンに、クレイが首を振る。
外れなら、これはなんの為のナイフだろうか。
「付いてこい」
クレイがシオンを手招きした。
「お料理教室じゃないからね」
野次を飛ばすエドワードを無視して、クレイに続き部屋を出る。
頬をふくらませているシオンを目の端で眺め、クレイは先を進んだ。
連れてこられたのは、殺風景な一室だった。
「まずは、最低限の護身術を身につけてもらう」
クレイが無感情な声で告げる。
握ったままの短剣を見下ろしたら、視線の先を、大きな手が掴む。
「比較的身軽なスタイルの短剣だ。軽いから攻撃力は少ないが、咄嗟の時に扱いやすい」
握る形を矯正される。
「その持ち方を保て」
「これで戦うの?」
クレイは、また「いいや」と首を振った。
戦闘経験のない非力な少年が相手にできるような相手はいない。
「あくまで護身用だ。万一の時、お前は自分の身を守ることを最優先しろ」
死なれてしまっては元も子もないと言うクレイに、シオンはこくりと頷いた。
腰に腕を回される。
「大人しくしろ」
後ずさったシオンに命じる。
言う通り立ち止まったシオンの腰は、両手で輪を作れそうなほど細かった。
ホルスターのサイズを調整しなければいけない。
クレイは考えながら手を離した。
「えっと·····」
シオンがモジモジと指の先を動かす。
心做しか、大きな瞳が潤っている。
「どうした」
悪いことをした訳でもないのに、一瞬変な罪悪感を感じる。
「自分で脱ぐから」
「は?」
シオンはベルトを外し、おずおずとズボンをおろし始めるではないか。
クレイは理解が追いつかず、首を傾げた。
「なぜ脱ぐ」
「·····?」
彼はとうとうパンツへと手を伸ばす。
クレイはようやく、彼が勘違いしていることに気がついた。
服を脱がせる理由を、性行為と捉えたらしい。
「やめろ」
クレイは彼の手首を掴んだ。
「あっ」
パンツをずり下げ、片足を上げていたシオンがバランスを崩す。
頭からクレイへ突進し、2人1緒に床へ倒れこんでしまう。
視界が反転した時、ガチャリと扉の開く音がした。
「稽古の進み具合は·····」
どうだ、と、顔を出したのはリヒト。
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