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〖15〗死ぬか?
しおりを挟むクレイの左側の上腕には、コアが埋め込まれていた。
やはり日々持っているものにそっくりだ。
(なんで?)
禍々しい雄に嬲られながら、シオンの心はボロボロになっていった。
1人になると、しばらくすすり泣く事しか出来なかった。
震える足で立ち上がる。
窓際の近寄り、2段目の棚を空け、仕舞っていたものを取り出す。
昨日、咄嗟に隠した硬貨。
そっと撫でてみる。
8年前、ジルがシオンに預けたものだった。
『コアを持つ者のみが、選ばれし者の候補になることが出来る』
ピタリと手を止める。
ベクシル・トレンジャー。悪行の限りを尽くした、最恐の海賊。
彼らの弟子が所有していたというコア。
海賊は両親と故郷を奪った仇だ。
憎むべき存在だ。
冷たい重りを抱きしめ、強くまぶたを閉じる。
(ジル、どういうこと·····?)
記憶の中の少年に問いかける。
コアは、紛れもない海賊の証だ。それも極悪非道な海賊組織の幹部に属していたことを示す。
(何も分からない)
彼の親は商人で、ジルは3つ年上の少年だった。
この硬貨とコアは、偶然似ているだけだと思いたい。
けれど、胸騒ぎが収まらないのだ。
(ジル、どこにいるの?)
記憶の中のジルの面影が、とても遠く感じた。
自分の知らないジルがいるみたいだ。
そして、叩きつけられた現実は、とても受け入れられるようなものでは無かった。
両親を殺したのは自分の存在だった。
今度こそ絶望の闇へ突き落とされた気分だった。
突如、勢いよく扉が開いた。
慌ててコインを隠し、扉を振り返る。
現れたのはリアムだった。
「·····─────」
彼はこちらへ真っ直ぐに向かってきて、シオンの前で立ち止まった。
「あっ」
手首を掴まれ、引き寄せられる。
視界が反転する。
シオンはベッドの上に投げ捨てられた。
「さっさと股開け」
リアムがベルトを外しながら、ベッドへ片膝をつく。
はだけたシャツから、鍛え上げられた筋肉が浮き上がる。
彼の胸の上で、銀のネックレスが、妙に生々しく輝いていた。
服の中に隠れていた裸は、恐ろしさを感じるほど屈強な体つきだ。
どんな抵抗も彼の前では無力だと、本能が告げる。
「聞こえなかったか?」
無力だ。
彼らの言いなりになって、惨めに犯される。
身体から力が抜けてゆく。
「もう、無理·····」
シオンは消え入りそうな声で呟いた。
「そうか」
返事は、身構えていたよりも、ずっとあっけないものだった。
「なら、死ぬか?」
「·····え?」
「死ぬことも出来ねぇってんなら、両手脚を折って扱い易くしてやってもいい」
残虐な台詞の意味を理解するのに、数秒かかる。
淡々と言葉を紡いでいた口元は賎しむように嗤った。
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