砂漠のラティア(序盤のみ)

亜依流.@.@

文字の大きさ
4 / 7

3.アジト

しおりを挟む








「おい、せめて姉さんたちのには言い返せよな。後でいじられるんだ、お前だってやだろ」


ラヤ本人による愚痴も無視される。


「アジトに収集をかけた」


娼婦たちと十分離れてから、リューディガは開口一番告げた。


「全員か?」

「ああ。武器も揃ってる」

「昨日のけが人は」

「ゼロだ」


向かった薬屋には親しい顔ぶれがいた。
この店の息子のマティアスに、隣の顔のよく似た双子がスーとカル。スーとカルに至っては本名がないので、ただの愛称である。


「遅かったじゃないか」


マティアスとハグを交わしながら、ラヤは店の奥へと進んでゆく。

誰も気づきやしないだろう。
潰れかけの老舗薬屋の地下。
そのさらに地下室が、義賊ユスティーツィアのアジトだとは。










「おばさんの調子はどうだ?」

「ああ·····ここ最近は、何とか食えてるよ」


この店の主であるマティアスの母は、謎の病に侵されて1年が経つ。
スラムではよくあることだ。恐らく長年の栄養失調によって体のあちこちにガタが来ているのだろう。
ラヤはそっと拳を握りしめた。


「俺たちはラヤのそばにいればいいんだろ?」


ラヤと同じ歳のスーとカルは、2人同時にそう問いかけた。
この四人とは幼い頃から生活を共にしてきた、いわば家族のようなものだ。
ラヤはうんと頷いた。

地下には200人程度の団員が待機していた。
元々は貧民街や難民出身の者である。
平和と平等を掲げ、また大切な人たちの命を守るため、ユスティーツィアの勢力に加わっている。
皆、ラヤに誘われた仲間たちだ。

現在は最後の作戦集会だ。
いつまでも盗みを続けるだけでは、貧民街の現状を救うことは不可能。
数日前、義賊が財を盗んだがために、民への徴収金が大幅に上がった。屋敷で働いていた召使い達が内通者を疑われ、刑に処されたという話もある。

これ以上盗みだけを続けるわけにはいかない。
国を変えるには、権力の元に制度を変える必要がある。


「今夜、城に進撃する」


作戦は緻密に練られていた。
真の目的は、この国の貧富の差を埋めることにある。
貧しさによって支配され、飢餓や早死する者を無くすためだ。
権力も金もない自分たちが彼らを説得するには、世論の傾向と武力が必要だった。
幸い、民達の世論は義賊へ傾いている。
あとはそれを代弁するものが必要なだけだ。

ラヤは一人一人と目を合わせる。
皆瞳孔には固い決意を秘めていた。


(俺がやるんだ)

兄の仇のため。
そして、"彼ら"との約束を果たすために。


   作戦会議後、ラヤはリューディガ、マティアス、スー、カルだけを呼び出した。


「なんだい、おかしら」

「その呼び方はやめろってば」


広げたのは見取り図だ。
昨夜領地主の邸宅から頂戴した王室の貨物経路だった。


「こりゃすげえや」


地図の読み取りを得意とするスーは興奮気味に呟いた。
仕入れていたのは葡萄。
水をふんだんに使って育てられた葡萄は、砂漠の地で宝石と同等の価値を持つ。
広い城内で新鮮なまま運ばれるため、貨物経路のゴールは最上階。
つまり、王の間までの経路が丸わかりだ。


「俺たちはこの経路を使って行く」


その台詞にカルが首を傾げる。
他の3人はすぐさま意図を汲み取ったようだった。


団員には、皆が兵力を足止めしているうちに、ここにいる幹部とラヤが正門から城内へ侵入すると伝えてある。
なぜ真実を湾曲して伝えたのか?


ユスティーツィアに内通者がいる可能性が挙がったためだ。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したが壁になりたい。

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

【完結】兄さん、✕✕✕✕✕✕✕✕

亜依流.@.@
BL
「兄さん、会いたかった」 夏樹にとって、義弟の蓮は不気味だった。 6年間の空白を経て再開する2人。突如始まった同棲性活と共に、夏樹の「いつも通り」は狂い始め·····。 過去の回想と現在を行き来します。

嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する

SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する ☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

後宮に咲く美しき寵后

不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。 フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。 そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。 縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。 ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。 情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。 狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。 縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。

セレニティ

いちご飴
BL
国で唯一のSS級冒険者として戦争で活躍していた少年が正体を隠して、普通の少年として学園に入学する話。

ひみつのモデルくん

おにぎり
BL
有名モデルであることを隠して、平凡に目立たず学校生活を送りたい男の子のお話。 高校一年生、この春からお金持ち高校、白玖龍学園に奨学生として入学することになった雨貝 翠。そんな彼にはある秘密があった。彼の正体は、今をときめく有名モデルの『シェル』。なんとか秘密がバレないように、黒髪ウィッグとカラコン、マスクで奮闘するが、学園にはくせもの揃いで⁉︎ 主人公総受け、総愛され予定です。 思いつきで始めた物語なので展開も一切決まっておりません。感想でお好きなキャラを書いてくれたらそことの絡みが増えるかも…?作者は執筆初心者です。 後から編集することがあるかと思います。ご承知おきください。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

BLゲームの脇役に転生したはずなのに

れい
BL
腐男子である牧野ひろは、ある日コンビニ帰りの事故で命を落としてしまう。 しかし次に目を覚ますと――そこは、生前夢中になっていた学園BLゲームの世界。 転生した先は、主人公の“最初の友達”として登場する脇役キャラ・アリエス。 恋愛の当事者ではなく安全圏のはず……だったのに、なぜか攻略対象たちの視線は主人公ではなく自分に向かっていて――。 脇役であるはずの彼が、気づけば物語の中心に巻き込まれていく。 これは、予定外の転生から始まる波乱万丈な学園生活の物語。 ⸻ 脇役くん総受け作品。 地雷の方はご注意ください。 随時更新中。

処理中です...