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3.アジト
しおりを挟む「おい、せめて姉さんたちのには言い返せよな。後でいじられるんだ、お前だってやだろ」
ラヤ本人による愚痴も無視される。
「アジトに収集をかけた」
娼婦たちと十分離れてから、リューディガは開口一番告げた。
「全員か?」
「ああ。武器も揃ってる」
「昨日のけが人は」
「ゼロだ」
向かった薬屋には親しい顔ぶれがいた。
この店の息子のマティアスに、隣の顔のよく似た双子がスーとカル。スーとカルに至っては本名がないので、ただの愛称である。
「遅かったじゃないか」
マティアスとハグを交わしながら、ラヤは店の奥へと進んでゆく。
誰も気づきやしないだろう。
潰れかけの老舗薬屋の地下。
そのさらに地下室が、義賊ユスティーツィアのアジトだとは。
「おばさんの調子はどうだ?」
「ああ·····ここ最近は、何とか食えてるよ」
この店の主であるマティアスの母は、謎の病に侵されて1年が経つ。
スラムではよくあることだ。恐らく長年の栄養失調によって体のあちこちにガタが来ているのだろう。
ラヤはそっと拳を握りしめた。
「俺たちはラヤのそばにいればいいんだろ?」
ラヤと同じ歳のスーとカルは、2人同時にそう問いかけた。
この四人とは幼い頃から生活を共にしてきた、いわば家族のようなものだ。
ラヤはうんと頷いた。
地下には200人程度の団員が待機していた。
元々は貧民街や難民出身の者である。
平和と平等を掲げ、また大切な人たちの命を守るため、ユスティーツィアの勢力に加わっている。
皆、ラヤに誘われた仲間たちだ。
現在は最後の作戦集会だ。
いつまでも盗みを続けるだけでは、貧民街の現状を救うことは不可能。
数日前、義賊が財を盗んだがために、民への徴収金が大幅に上がった。屋敷で働いていた召使い達が内通者を疑われ、刑に処されたという話もある。
これ以上盗みだけを続けるわけにはいかない。
国を変えるには、権力の元に制度を変える必要がある。
「今夜、城に進撃する」
作戦は緻密に練られていた。
真の目的は、この国の貧富の差を埋めることにある。
貧しさによって支配され、飢餓や早死する者を無くすためだ。
権力も金もない自分たちが彼らを説得するには、世論の傾向と武力が必要だった。
幸い、民達の世論は義賊へ傾いている。
あとはそれを代弁するものが必要なだけだ。
ラヤは一人一人と目を合わせる。
皆瞳孔には固い決意を秘めていた。
(俺がやるんだ)
兄の仇のため。
そして、"彼ら"との約束を果たすために。
作戦会議後、ラヤはリューディガ、マティアス、スー、カルだけを呼び出した。
「なんだい、おかしら」
「その呼び方はやめろってば」
広げたのは見取り図だ。
昨夜領地主の邸宅から頂戴した王室の貨物経路だった。
「こりゃすげえや」
地図の読み取りを得意とするスーは興奮気味に呟いた。
仕入れていたのは葡萄。
水をふんだんに使って育てられた葡萄は、砂漠の地で宝石と同等の価値を持つ。
広い城内で新鮮なまま運ばれるため、貨物経路のゴールは最上階。
つまり、王の間までの経路が丸わかりだ。
「俺たちはこの経路を使って行く」
その台詞にカルが首を傾げる。
他の3人はすぐさま意図を汲み取ったようだった。
団員には、皆が兵力を足止めしているうちに、ここにいる幹部とラヤが正門から城内へ侵入すると伝えてある。
なぜ真実を湾曲して伝えたのか?
ユスティーツィアに内通者がいる可能性が挙がったためだ。
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