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三章
re.《66》違和感
しおりを挟むすごく近い。
それで、すごく立体的な顔立ちだ。
(あ)
今なら、灰色の髪に隠れた片目が見られそうだ。
そっと手を伸ばしたら─────身体にかかっていた重力が、ふっと消え去った。
「あっ!」
ミチルは尻から座り込んだ。
目の前の相手が、突如こちらから手を離したのだ。
(痛い·····)
「すみません」
ユンシャは仁王立ちのまま言う。
片目はこちらをじっとり見下ろしてる。それはとても不躾な眼差しで、ミチルは訳が分からないまま言葉をなくした。
違和感。
一点で立ち止まった視線は、めくれたスカートの中身を指してる。
ハッとして脚を閉じたら、彼はそのまま、ゆっくり部屋を出ていった。
「·····??」
柔和で当たり障りのない雰囲気の青年だったはずだ。
(へんなの)
まるで、何かを探していて、見当たらなくて興味をなくしたようなそれだ。
転んだのに手を貸すこともない。ニコリともされなかった。
しかし数秒間だけ、こちらに強く興味を示していた瞬間があった。
それは─────。
「·····っ」
本能的なものだとしても、使用人の立場としてあまりにも無礼ではないだろうか?
モヤモヤしながら、また箒を手にする。
ミチルは扉側からせっせこと床を掃き始めた。
見えない一列ずつを順番に、均等に。真ん中に来た頃には、釈然としない気持ちは消えゆく。
元から綺麗だと思ったが、ある程度ホコリが浮いている。それを決めたところにまとめて、一旦ゴミ袋に投げる。
掃除の才能があるのかもしれない。
ジェロンに、もう「〇〇っぱなし」なんて言わせなくて済みそうだ。ちょっとは見直してもらえるかも、なんて、知らず知らず口角が緩んだ時だった。
ノックの音が響いた。
2人目の訪問者は礼儀がいい。
少し置いてから扉が開くから、さっきみたいなことにはならない。
ジェロンだったならば、今度から掃除は手伝うと宣言しよう。
身軽に振り返ったミチルは、しかし思いがけぬ人物に、口をパッカリ開けたまま閉じられなくなった。
スラリと背が高くて、ただそこへ佇むだけで神々しいオーラを放つ美男。
「先程下界してきたんだ」
部屋に行ったら使用人の説明で状況を知って、ここへいると聞いてきたと続く語尾が、はたと止まる。
セクシーな唇から奏でられる、蜜を含んだみたいな声まで魅力的だ。
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