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三章
te.《29》違和感
しおりを挟む何かがスルッと抜け落ちているような違和感。
それは、気に止めるにはとてもささいで、しかしそれすらおかしなことに気が付かされる。
レイモンドから確かに聞いた。
とても悲しい気分だった。やるせないのに、その通りだと納得できてしまったのも覚えている。
だって、それは"あの時"、ジェロンがそばにいなかったから。
でも、だから"あの時"っていつだったっけ。
「折り入って申し上げたい事があるのですが·····少々お時間をいただけますか?」
レイモンドの申し出に、ミチルはややあってから頷きかける。
が、それよりも先に、返答は別の者が代弁した。
「ミチル様はご体調が優れません。夕刻には陛下とのディナーも控えております故、急用で無ければ日をお改め下さい」
「!」
レイモンドどころかこちらにさえ興味もなさそうだったジェロンだ。
別に、体調はよくもないが悪くもない。しいて言うなら欲求不満で悶々としてるが、言えるはずもなく。
「ならば、尚更私が御役にたてるでしょう」
「お言葉ですが」
大人の男2人のキャッチボールは続く。
「それ等の能力は、私が如何なく習得済みですので、ご心配なく」
悪魔族かつ獣人への医療技術等の事だろう。
それも、2人は王室に仕える家系として高等な教育を受け選び抜かれた超エリート。
どっちが診たって問題ないが、どちらも譲らぬ意味が分からない。
「ふ」
吐息のような微笑みは妙に色っぽい。
それには、レイモンドの余裕と嘲笑が含まれていた。
「いえ·····私と能力値を張り合おうとは。つまらないと言ったことは謝罪させていただきます」
愉快な一面もある人だと呟くのは、冷やかしでしかない。
そんな上司に対して、相手は一言。
「結構です」
とりあえず見守っていたミチルは、静かながら穏やかとは言えない空気に眉を下げた。
普段はどちらも、違うタイプで大人びている使用人だ。
それなのになんで、その2人が言い合いしてるみたいになってるんだ?
デジャヴだし、前より関係が悪化してる気がする。
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