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re.《413》魔物の巣窟
しおりを挟むあの柔肌に強く噛み付いて泣かせたい。
やめてと鳴こうが、おねがいと懇願しようが、何度も何度も奥へ打ち付けて、この雄専用の雌にする。
想像だけで射精出来そうだ。
「逢いたいよ、ミーちゃん·····」
笑んだまま、寂しげな声がポツリとつぶやく。
恋しくてたまらない。
部屋の主は、まるでこの世で一番尊いものを呼ぶような音色で続けた。
「早く·····───ぐちゃぐちゃに犯してあげたいなぁ·····♡」
もう時期、彼がやってくる。
可愛い息子の所へ。まさかその息子の頭の中で何度も犯されていることなど露ほども知らず、ちょっと申し訳なさそうに部屋を覗いてくるだろう。
彼がくるまでに勃起を鎮めるのはルーティンだ。
そのくせ鏡の前で、寝癖なんかを確認したりする。
シャツはだらしなくない程度にボタンを外したりなんかして、意味もなく襟元を直す。そうしていたら、"お馴染みのヤツら"が難癖をつけてくるから、ルビーは頭の中から"その声"を追い出した。
小さな足音が近づいてくる。
ここが、恐ろしい魔物の巣窟だとも知らずに。
ノックしてから、そっと部屋の中を覗いてみる。
室内でも神出鬼没だから身構えてしまうのだが、今日は少し違っていた。
「ミーちゃん、いらっしゃい」
いつもなら抱きつこうとしてくるルビーは、目の前に佇んでこちらの手を取った。
そして恭しく手の甲へ口付けするものだから、ビックリして腕を引っこめる。
「どう?」
彼はパチリとかた目を閉じて見せた。
「貴公子っぽい?」
「·····ぁ·····」
そういえば、街中での彼の噂は耳にしていた。
それも、貴族令嬢たちのあいだで持ち切りにされた台詞だ。
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身分の高そうな男であるが、それだけの美貌を持ちながら、社交界で目撃されたことは無い。
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実は非運の公子だとか、誰もを虜にする儚げな容姿を武器に成り上がった奴隷であるとか、様々な噂が飛び交った。
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