悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

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二章

re.《409》

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「──憂いを帯びたミチル様もお美しいです」


そして午後にやってきた教育係は、心にもないお世辞を並べることが全く苦ではないのだから、真の社交人である。


「が、笑顔はもっと素敵ですよ」


仕方の無いことかもしれない。

彼の主人であるルシフェルの容姿は美の神そのものだ。そんな神の傍にいれば、そこらの美人もこの自分も同じように見えるのだろう。

ミチルはそっと彼を見上げた。

今日は授業は無いはずだ。
何か用事があるのか、それとも気持ちを休めるための要員として悪魔が送り込んだのか。


「手の甲への口付けをお許しください」


仕方ないから無言で了承して所作を監視する。

それにしても恭しいその動きには感動する。


「3日後の授業はお休みとしましょう」

「?」

こちらへ口付けた唇が告げた。


「正午、ルシフェル聖下がいらっしゃいます」


良ければ昼食を共にしようという誘いに、ミチルは返答を戸惑った。

端的に言えば、"なんか"苦手なのだ。

最も高貴な場で、マタタビを鼻の前にくすぐられている気分。
彼の、あの濃密な深紅は、感覚や意識さえ支配する。

幸福や、満たされた気持ちさえ引きつれる時がある。
かと思えば、なにか辛いことを思い出すような切なさを与えられる。
それはルシフェルがこちらに触れる時や微笑む時。
はたまた、何もせずとも、その一挙一動で。

上手く居られる気がしない。
だから"なんか苦手"としか言いようがない。

首を振ったら、レイモンドは酷く落胆した顔をした。
得意の口巧で上手く伝えてくれればいい。


「何故です?」


唇を尖らせるのもわざとらしい。
立派な紳士がそんなことしたって、全然可愛くない。


「会えない」

「予定はありませんよ?」

「会わない」

「だから、何故です?」


振り出しに戻った。
いつにも増してしつこい教育係だ。人懐こい感じが、今は無性に気に食わない。


「会いたくない」

「なんと!」


感情任せに言い捨ててから、ミチルは直ぐに取り消したくなった。

ルシフェルに非は無い。
非の打ち所がない男とは彼のことを言うのだろう。レイモンドに限らず、ため息が出るような容貌やその偉大さを知る者ならば、顔をしかめるのは当たり前である。











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