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二章
re.《398》もう1回
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切ない音色。
胸に響く高い音。
寂しくも見えたあの指。
楽しい記憶ではなかったかもしれない。
けれども、あの音色が、ハインツェさえ慰めるようだったから。
「·····───だから·····」
「なんて?」
片膝をついたハインツェにギョッとする。
引きさがろうとしたらこんどは片手を取られてしまった。
それさえ、添えるような力加減だ。
"このままでいられると思うな"。そう言っていた。
それなのに、どうして、さっきから変な態度をとるんだ?
「すきだから」
もっと昔に、彼の兄に言った言葉を繰り返す。
ピアノの演奏が好きだ。
いつからか分からないけど、あの切ない音が恋しい。
何か、とても幸福な記憶を思い出せそうな、懐かしい音色なのだ。
「───は」
「·····?」
切れ長の目がめいっぱい見開かれると、なんだか少し幼く見える。
そしてピタリと静止する。
1ミリも動かないくらいだ。心配になってちょっと近づいてみようとしたら、突如長いまつ毛が瞬いて、びっくりして飛び上がる。
「もう1回」
「·····へ·····?」
「もう1回言って」
動向まで縦に見開かれていて恐ろしい。
あまりにも美しい顔立ちは、恐怖さえ引き連れるのだ。
それより、もう1回言えとは、なんの事だ?
2度目も聞こえなかったのだろうか。
あまりにギラギラと光る双眸から視線を逸らす。
もごもごしたって、相手は許してくれない。
「あの·····す、き、だか·····───ンッ」
高い鼻が擦れて、ぱくりと口を塞がれていた。
突然のことに驚くまもなく身体が浮く。
すぐに降ろされた時、身体は柔らかなマットに沈んだ。
ベットの上だ。
押し倒されて、濃い影が落ちてくる。
「ふぇ·····?ま、っ·····──·····ッ」
上唇を舐められたら、それから直ぐに舌が絡まってきた。
突然何事か。
すぐに出ていくんじゃなかったのだろうか。
「ぁ、なんれ·····ッ·····ン·····ッ♡·····はぅ·····♡」
両手で彼の肩口を押さえるのに、頑丈な体にはあまりにも無力でしがみついているみたいだ。
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