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re.《390》軌道修正
しおりを挟む有り得ない言葉が甦ってきて、思わず毛布を握りしめる。
大変だ。
どういうつもりだったのか、聞かないといけない。
道を踏み外させたのは自分なのか?
もう、極力関わらない方が良いのでは?
そんな考えを巡らせていたミチルは、視界の端で光ったものに意識を呼び戻された。
「もう、僕のこと、嫌い·····?」
こぼれていく水滴がダイヤみたいだ。
あまりに美しいそれに呆然としてから、そしてギョッとする。
「ミーちゃんが嫌がることして、ごめんなさい·····どうしたらいいか、分からなくって·····っ」
ローゼは次々と新しい水晶を生む。
なんと、泣いている。
加害者のくせに泣くな。
そんな言葉は、涙を流す幼子に言えるはずもない。
ミチルはアワアワとしてから、しかし焦って顔を逸らす。
泣いたってダメだ。
当たり前だろう。
変に優しくして、付け上がったりしたら───。
「ミーちゃんの事考えると、苦しくて、痛くなっちゃうの、なんでか、分からなくて」
「·····へ·····?」
思わずパッと振り返ったら、バッチリ目が合った。
(つまり·····)
ルビーは、こっちを、邪な目で見ていた訳では無い?
少なくとも本人は無自覚で、こちらに対して親子愛以外の禁断を抱えていたのでは無いということになる。
「ぼく、ヘンかな?ぼく·····」
「あ·····」
ダイヤモンドより綺麗な涙。
静かに泣くのは、とても子供らしくない。しかし鼻をすすりあげるのが慣れていなくて、苦しそうな泣き方に、ズキリと胸が痛む。
自覚がないなら、目覚めさせてはダメだ。
昨日のアレは不味い事だったなんて知らせては行けない。
彼の性思考を軌道修正しなければ。
「変じゃない」
慌てて反論する。
よく考えてみたら、ルビーはそういったことを学んでいないのだ。
それでも性欲があるのは当たり前のことで、きっとマナ吸収による興奮状態が変な方向に働いたのだろう。
「変じゃない?」
ヒックと鼻先を痙攣させて、彼が聞き返すのに大きく頷く。
モジモジしている手は寂しそうだ。
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