悪魔皇子達のイケニエ

二章

re.《３８６》

ただの授乳だ。

それなのに、こんな風に押さえつけられて、何をされるか分からない恐怖を感じるなんて、おかしな事だ。
まるで、捕食されるみたいだ。

それも、とても獰猛で、力の強い獣に───。


「·····知らない人みたいで·····」

｢ふふ｣

｢ぁ♡｣


首筋に落とされたキスも甘い。
じんわり浮かんだ汗が恥ずかしいのに、おまけのように舐められて、ゾクゾクしたのが駆け抜けて行った。


｢それで、ドキドキしてるの·····？｣

｢ふ、へ·····？ぁ、♡｣


長い指先が、遊ぶようにキュンとそこをつまむ。
反対側は同じように吸い上げられて、へそ裏が締め付けられる。

熱くなる下着をしつこく撫で続けられるうちに、恥じらいなんて訳が分からなくなってゆく。

ベットでじゃれ合う影がふたつ。
肩幅が大きくて、折り曲げられた脚はながい。

それを見ながら、ミチルは唖然と呟いていた。


｢男の人みたいで·····｣


───ピタリと、彼の指先が止まった。


｢·····"みたい"？｣


下着とくっついたままの先が熱い。
否、彼ではない。

こちらの蕾が、期待に膨れているのだ。

ながい腕は、サイドテーブルの灯りをちょっと薄くした。
その時に極りと震えた目の前の喉仏も、背徳的な色気を醸し出す。
本当に、もう知らない人みたいだ。

オレンジ色の光が、長いまつ毛をかけてゆく。

高い鼻や大袈裟な凹凸の骨が深い影を作る。

(あれ？)

こうして見ると、本当に───。


「·····普通に"男"だけど」


呟きは、確かに空気を震わせた。

無言のまま、長い腕が下着に引っかかる。いきなり何をするのかと、驚いてずりあげようとしたのに、なんと無視して脱がされてしまう。

オレンジの灯りの元、ねば着いた布があらわになった。
たっぷり汚れたソレに恭しく口付けた相手を見上げて、脳内に警告音が響く。

熱にうなされたように座ったローゼの瞳があった。

長い指は内腿を鷲掴みして、そっと、しかし強引に両足を広げてくる。


｢だめ｣


伸ばした腕は抵抗しても、まるで赤子みたいに無力だ。