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二章
re.《381》
しおりを挟む「何回も痛いのは嫌だから·····ね?ミーちゃ·····───」
愛らしい少年の顔は、影に遮られた。
視界は黒く染まる。誰かに塞がれたのだ。
寸前に光ったのは剣の切っ先と、散らばる白金。
結果として、儀式は、ヨハネスの手によって事なきを得た。
少し怖いくらいに無口だった彼が何を考えていたのかは分からない。塞がれたままだから傷口を確認することも出来ず、開放された時には、血の跡だけが残っていた。
「僕、あの目の色嫌い」
新しい部屋に案内されて、ルビーは開口一番不満を漏らした。
嫌いとか、嫌いじゃないとかいう問題では無い。
2人は親子で、殺し合いの戦いをした仲である。
「やっとミーちゃんと2人きりになれた♪」
ルビーが新しい服に着替えたら、血の匂いがしなくなった。
ホッとして、ミチルはそっとため息をついた。
ルビーに与えられた新しい部屋は、地下の時とは打って変わって日当たりの良い角部屋だ。
ほかの皇子たちと同じような内造。ベットに腰かけたら、相変わらずフカフカだった。
「ミーちゃん」
近寄ってきた彼も、隣にひょいと腰掛けてくる。
随分身軽そうだ。少しコケた頬が彼の幼少期の姿だと知ると、胸はキリキリと傷んだ。
ひもじくて仕方がなくて、魔物を貪り、繰り返し毒に苛まれた身体だ。
しかし次の行動には、慌てて首を振った。
「な、に」
「何、って·····」
ベットに来たから、いいのかと思ったと彼が言う。
傾いてきた顔は、確かにキスしようとしてきた。
「もうおなかペコペコだよ。あの使用人の魔術も解除したよ?」
「あ·····」
彼にとって、コレは食事なんだった。
でも未だに慣れない。
だって、この行為はキスに変わりないし、相手は今8歳程度の少年である。
「さっきのこと、怒ってる·····?」
不意に呟かれたのは儀式の時の件だろう。
こっちの機嫌を気にするから、戸惑ってしまう。
「·····痛くないの?」
「ん?」
問いかけに、少年はキョトンとしてから、ニコリとする。
笑い方が大人っぽい。それは彼に似合っていて、けれど少し見た目に相応しくはなかった。
「痛くないよ」
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