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二章
re.《379》して欲しい
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珍しく天気が良くて、気候は爽やかである。
窓の向こうで、幼虫みたいな蝶が飛んでいった。
季節を問わずに羽化する種類だ。
そんな、のどかな昼下がり。
城の教会は、黒い幕に覆われた。
「汝はここに血の魔術を封じ、天界と悪魔界夫々の最も高貴なものの許可無くこれを解放できないとする」
祭壇の中央に立ったレイモンドが宣言するのと共に、淡い光の柱がのびる。
向かいに佇んでいる少年は、神秘的な光景を前に欠伸をひとつ。
ミチルは冷や汗をかきながらその様子を伺っていた。
───ルビーを皇族に迎え入れるための儀式が始まったのは、凡そ数分前。
儀式に参列しているハインツェにアヴェル、ヨハネスの3人は今でこそ落ち着いているが、なんだか変な雰囲気だ。
無理もない。
ヨハネスはルビーと命をかけた戦闘をくりひろげたというし、アヴェルとハインツェだって、一度彼を殺そうとしている。
ルビーの野望だって正しく、この3人と、そして今自分の隣で儀式を眺めているダリアを殺すことだ。
とんでもない親子である。
家族間でのデス・ゲームは、なんとしてでもこの自分が食い止めなければいけないというわけだった。
「───では、杯に生血を」
ミチルはふと、ルビーの方へと視線を戻した。
そういえば、自分がここで結婚を契った時も、器へ血を垂らしたっけ。
どうやらそれが、一族へ仲間入りする仕来りらしい。
レイモンドからルビーへ、小さなナイフが手渡される。
「僕、痛いのは嫌い」
高い少年声が言った。
見れば見るほど人形みたいな顔立ちの、幼い悪魔だ。
「今度は何を企んで·····おっと、間違えました。指先だけで良いのですよ」
ルビーはレイモンドのセリフは聞こえていないみたいに辺
りを見渡す。
そしてくるりとこちらを振り返って、いいことを思いついたように笑顔を咲かせた。
「ミーちゃんにして欲しい」
「───え」
予想外を見守っていたミチルは、思わず声をあげた。
あの肌を傷つけるなど以ての外。
この自分が、ルビーに刃を向けるなんて出来る訳ない。
「そんなこと·····」
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