悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

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二章

re.《376》

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ミチルは思わず立ちすくんで、それでも神々しい美男から顔をそらせなかった。

おそらく、彼を怒らせたら、ダリアと良い勝負か、それよりも恐ろしい気配がする。



「アイツは処分するべきだ」


ルシフェルの言葉を無視してアヴェルが言う。
ただの悪魔なら問題無いが、ルビーはそうでは無いと、彼は吠えるように訴えた。


「血魔術に呪われた災いだ」


血魔術の使い手は謎に包まれている。
不可解な死を遂げたり、様々な恐慌をもたらしたという話もあれば、代償と引き換えにどんな望みも手に入れることが出来る存在だとも。

それは、底の無い貪欲な呪いだ。

聴きながらミチルは胸が苦しくなった。

ルビーは呪われている。特級の呪いを抱えて産まれ、災いそのものなのだと。
その呪いは、誰よりもルビーを苦しめていることを、自分だけが知っている。

止まらないアヴェルの言葉を、ルシフェルが片手でさえぎる。
まるで耳を傾ける必要のない話だと判断したみたいだ。

それがこちらへの気遣いなのかは分からないが、彼の呆れたようなそれは、幾分かこちらの心を軽くした。
それでも、耳に入った不吉な言葉は、みぞおちの当たりをグルグルと苛んだ。

今後の話はダリアが戻ってからだという。
今朝に戻るはずだった彼は、政務により予定が一日延びたようだった。

朝には帰るって、約束みたいにキスをしたくせに。

そんなふうに思う自分が嫌になって、つま先を見下ろす。
別に、それがなんだって言うんだろ。


「ミチル」

「!」

「君はここに残るんだ」


2人が出ていったあとで、退出させられる気だったミチルは居残りを言い渡された。

アヴェルとハインツェの時と比べて穏やかだが、微笑んでいない。

待機していた使用人も出ていき、扉が完全に閉まると、おいでと呼びかけられる。
彼は机を挟んで椅子へ腰かけていて、ミチルは迷った後、そっと彼の前に近づいた。
先生に呼び出された生徒の気分だ。


「話さなければいけないことがあるんじゃないかな」


問いかけは落ち着いていて、しかし有無を言わせぬそれだ。

絶対に隠さなければいけないことを、気付かれたのだ。
すぐに分かって、ミチルはキュッと唇を結んだ。

(どうしよう)

そんな躊躇は無意味だと知る。

彼に隠し事はできない。
全てを見透かすような───心すら覗くような真紅が、じっとこちらを見ている。
もはやため息すら漏れぬような美貌に射止められて、ことの成り行きを話す事になった。












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