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二章
re.《368》痴話喧嘩
しおりを挟む「役割は、ちゃんと·····」
こなすつもりだ。
もうそれでいいじゃないか。
どうして今更、こっちが惨めになることを言うんだ。
最低男。
そう罵りたいのを我慢して、プイと顔を背ける。
「·····そんな話はしていないだろう」
対して相手は、呆れたようにため息をついた。
無駄に色っぽい男の吐息にカチンとくる。
喧嘩を吹っ掛けてきた方が心底面倒そうに呟くものでは無い。
溜まった鬱憤が爆発しそうだ。
悶々とするミチルは、「お前がレイモンドへ懐いているのが不愉快だ」という、何とも器の小さい旦那の不満を全く理解していない。
「ぬいぐるみを取ってくるくらいで、キメ顔でなにが「勿論、必ず」だ。いやらしい目で他人の妻を誑かしやがって」と。そんな僻みや嫉妬も、当たり前に知ったことでは無い。
だから、部屋の空気が最悪だ。
胸はキリキリと痛んだ。
「夫婦間の痴話喧嘩は、夫が折れるものですよ」
囁くようにして挟まれた声に、ミチルは少し息をついた。
そうだ、気にしてる場合じゃない。
だって今は、他に任務があるんだ。陰湿な最低悪魔なんかより、そっちに集中すればいい。
「どう聞けば勘違いするんだ?」
ダリアの否定には賛同する。
どう見たって、一方的に罵られてた。
「ではまた、こんなにも愛らしい奥様をいじめていたんですか?」
その通りだ。
レイモンドにも賛同したいが、こっちは大きく頷くのをやめておいた。
またあとで、陰湿に虐められる羽目になるからだ。
「陛下はミチル様のことになると、まるで少年の様ですね」
言いながら差し出されたぬいぐるみを受け取って、クンと匂いを嗅ぐ。
あの花の匂いがする。
最後のセリフはよく分からないが、確かに手元に戻ってきた。
そんなこちらを眺めて、グレーの瞳は解けるように綻んだ。
「あの方が知ったら、少し困ってしまうような光景ですね」
「·····あの方?」
「ええ。そのぬいぐるみを───」
レイモンドの言葉の先は続かなかった。
この部屋の、否この世の主が、彼を黙らせたからだ。
普段はダリアにすら軽口を叩くレイモンド。そんな彼は、命令を行使されると、告げられるまま部屋を出て行くしかない。
力関係を見守りながら、ミチルはそっと壁にくっついた。
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