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re.《352》ワガママ
しおりを挟む聞き返してきた声は落ち着いている。
なんで。そんなこと、説明するまでもない。
気がつけば素っ裸で、あんなトコロを舐められていたのだ。それも誰でもないルビーに翻弄され、快感を得た。
伸びてきた手が、そっと頬を撫でる。
分からなくて項垂れていたら、肩口へ伸びたその手は、そこをベットへと倒したでは無いか。
「まだお腹ペコペコだよ。ミーちゃんだって·····」
「!」
「ずぅっと、甘いお汁たくさん漏らしてたよね?」
また荒くなってゆく息遣いに、返せる言葉はない。
毎夜、彼に愛撫されて濡れていたのを指摘された気分だった。
「·····分かった、今日は我慢する」
「·····へ·····」
ルビーはあっさり手を離した。
長い指はくしゃりと髪をかきあげる。形の良い額があらわになって、直ぐにほぐれ落ちた。
「ごめん·····歯止め効かなくなっちゃった。無理矢理嫌なことして·····僕のこと、嫌いになった?」
ワガママなのは、むしろこっちの方だ。
だって彼の食事だ。
(でも)
じわじわ広がるのは、焦りと罪悪感。
辛そうな顔をさせたくない。こっちがそう思ってるのを知ってるから、相手は無理に笑うんだ。
よく分かる。
幼い頃の自分と同じだから。
「ルビー·····」
パクパク口を開閉する。
声を出そうとしても、なんだか泣きそうになってしまう。
母も、こんな気持ちだったのだろうか?
「ミーちゃん、もしも·····」
「·····?」
「あの使用人の魔術を解いたら、ご褒美が欲しい」
もしもじゃなくて、必ず解くと、相手は必死に言う。
しかし次に発されたのは、予想していた彼の願いとは違うものだった。
「一緒に来て欲しいところがあるんだ」
彼の気持ちは、考えたって分からない。
純粋な好意だ。それも親子の間の親愛である。
それなのにたまに、よく分からなくなる。
報告に行こうとしたら、ダリアも留守だという。自室に連れ戻されて、ミチルはわけもなく部屋を歩き回っていた。
運動不足解消だ。
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幽閉と変わらない。
「こちらをお履き下さい」
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