悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

文字の大きさ
上 下
622 / 798
二章

re.《334》ママ

しおりを挟む









「·····え·····?」

「いくら"ママ"でも、流石に甘えすぎたよね。嬉しくて·····我儘言っちゃった。こんなふうに、ミーちゃんに会えただけでも、すごく幸せなのに·····」


細い髪が揺れると、線の細い顔立ちは更に繊細に見える。

不意に、大きな体躯が横へ転がる。
裸の体を抱きすくめられる。

真夜中、時計の音だけが心地を落ち着ける。
キリキリ痛む胸を抱いて眠る夜だった。

───背後の悪魔が、ひっそり微笑んだことも知らずに。














3階の執務室で、ミチルは思わず肩を竦めた。

報告の時間だ。
ルビーと合わせたとおりの辺りざわりない報告を終えてから、数秒の沈黙がすぎた。

なにか、しくじっただろうか。不安を他所に、相手は威圧的な眼差しを逸らした。


「彼の名はお前が付けたままで良いだろう」


ホッと胸を撫で下ろす。

上手くいったみたいだ。

なんだか罪悪感があるが、別に騙しているわけではない。
ただ話していないことがあるだけだし、結果的には全て彼の望むとおりになるんだから問題ないだろう。


「他には?」


(ほか?)

今の報告じゃ、足らないということだろうか?

(他に·····)

特に、何も無い。
そんな返答が許される相手じゃないとわかってる。
ミチルは5秒ほど考え抜いた挙句、おずおずと口を開いた。


「·····甘いものが好きで、苦いのが、嫌い·····褒められると、よろこんで·····」


ロゼの瞳を思い出す。
頭を撫でられると猫みたいに擦り寄ってくるのだ。
他の情報を思い出すべく、出来事を辿った時だった。

───カタン。

相手のペンを置いた音が、やけに大きく響いた。

見つめた先のバイオレットは既にこちらを射抜いている。
ミチルは口を噤んだ。


「ずいぶんと良くしてあげているみたいだね」


静かな言葉が冷たいのはいつもの事だ。


「無意義な報告は終わりか?」


(無意義?)

なんでもなさそうに発された単語は無視できなかった。

だってルビーは、我が子ではないか。
ダリアの子供でもある。


「家族なのに?」














しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

恋人が出て行った

すずかけあおい
BL
同棲している恋人が書き置きを残して出て行った?話です。 ハッピーエンドです。 〔攻め〕素史(もとし)25歳 〔受け〕千温(ちはる)24歳

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

処理中です...