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二章
re.《334》ママ
しおりを挟む「·····え·····?」
「いくら"ママ"でも、流石に甘えすぎたよね。嬉しくて·····我儘言っちゃった。こんなふうに、ミーちゃんに会えただけでも、すごく幸せなのに·····」
細い髪が揺れると、線の細い顔立ちは更に繊細に見える。
不意に、大きな体躯が横へ転がる。
裸の体を抱きすくめられる。
真夜中、時計の音だけが心地を落ち着ける。
キリキリ痛む胸を抱いて眠る夜だった。
───背後の悪魔が、ひっそり微笑んだことも知らずに。
3階の執務室で、ミチルは思わず肩を竦めた。
報告の時間だ。
ルビーと合わせたとおりの辺りざわりない報告を終えてから、数秒の沈黙がすぎた。
なにか、しくじっただろうか。不安を他所に、相手は威圧的な眼差しを逸らした。
「彼の名はお前が付けたままで良いだろう」
ホッと胸を撫で下ろす。
上手くいったみたいだ。
なんだか罪悪感があるが、別に騙しているわけではない。
ただ話していないことがあるだけだし、結果的には全て彼の望むとおりになるんだから問題ないだろう。
「他には?」
(ほか?)
今の報告じゃ、足らないということだろうか?
(他に·····)
特に、何も無い。
そんな返答が許される相手じゃないとわかってる。
ミチルは5秒ほど考え抜いた挙句、おずおずと口を開いた。
「·····甘いものが好きで、苦いのが、嫌い·····褒められると、よろこんで·····」
ロゼの瞳を思い出す。
頭を撫でられると猫みたいに擦り寄ってくるのだ。
他の情報を思い出すべく、出来事を辿った時だった。
───カタン。
相手のペンを置いた音が、やけに大きく響いた。
見つめた先のバイオレットは既にこちらを射抜いている。
ミチルは口を噤んだ。
「ずいぶんと良くしてあげているみたいだね」
静かな言葉が冷たいのはいつもの事だ。
「無意義な報告は終わりか?」
(無意義?)
なんでもなさそうに発された単語は無視できなかった。
だってルビーは、我が子ではないか。
ダリアの子供でもある。
「家族なのに?」
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