悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

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二章

re.《312》奥さん

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「ねえね」


呼んできた方を振り向いたら、相手はもう上半身裸では無いか。
細身の身体に、綺麗に鍛えた模範みたいにして筋肉が揃ってる。ミチルは慌てて視線を宙に泳がせた。


「駄目」

「ちぇ·····」


こんなに大きな子供、やっぱりすぐに自分の子だと自覚するのは難しい。

酷くたって一緒に風呂に入るのは別だ。
寧ろ、仲良くひとつの浴槽に浸かるなんて馬鹿げてる。

彼が自分に良くする理由を、見つけないといけない。
恐ろしい計画を知らずに情が移ってしまったら大変だから。


「··········」


ベットの上に脱ぎ散らかされたシャツを、手持ち無沙汰にたたんでやる。
ふわりと香ったのは、出会った頃と同じく花の香り。つぼみを思わせる瑞々しいそれから、とても血の匂いなんてしない。

大きい服だ。
襟の裏側にこった模様がついてる。
おそらく特注だろう。

両手に収まらないからと、ベットに広げて折りたたんでいたミチルは、思わず飛び上がった。
実際には、捕まってて動けないから、そんな気分になっただけだが。


「わ~♪何してるの」


何してるかなんて、見てわかるだろう。

ただいまと耳元に囁く声があまりにも甘いので、困惑で言葉を失う。

いきなり後ろから抱きしめられたのだ。
もう怖がられてないことは相手も分かっているらしい。
触れ合いを慣れさせるみたいに、後ろから伸びてきた手は、こちらの手の甲をすっぽり覆った。


「新婚の奥さんみたいだね♡」


そこはせめて、母親みたいだと言って欲しい。

(·····母親)

自分にとってはいつも床に伏していた母。
優しくて弱かった。甘えようとしてよりかかったら、共倒れしてしまいそうなほど。

彼女は、自分のことをたった一人の子として愛してくれた。
それだけが、幼い自分にとっての全て、世界だった。

地球人と悪魔は違う?
本当にそうだろうか。
ただ逃げたいだけではないだろうか。

ミチルははたと思考を止めた。
相手の指が指に絡まりながら、もう片方の手は腰を支えている。













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