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二章
re.《307》弱肉強食
しおりを挟む王位継承を企む身内の思想は、皇族であれば専らおかしくない話だ。
土地に何もしてないという主張だって、彼が生まれたことにより地下の領地が開かれようとしているのであれば間違っていない。
全ての伏線がひとつになる。
「そんなことより自分について聞かないのか」とめいっぱい見つめ返してきた瞳は、気にして欲しいとでも言いたげだった。
"───ここが気に入ってるよね?"
「··········」
手順は彼の皇室入り。
正式な皇族として入宮に受け入れることが必然だ。
もとよりあの青年の目的のひとつでもある。
弱肉強食。強者が弱者を喰い、登り詰める皇族の掟で生きていくことを望んでいた。
だから彼は、無茶な真似をした。
狂っていると思っていたが、一理ある狂者だ。
「力を貸してくれるかい?」
血魔術は幻の異能力とされ崇められる一方で、万人の恐れる対象であることから、迫害されできた。
だから、血魔術者には、規制の元でのみ血魔術を使える禊が必要不可欠。
全ての邪悪な血魔術を解き、その禊を終えることによって正式な皇族と認めることが出来るという。
「ミチル」
ルシフェルは笑ってはいなかった。
息を飲むほど精悍な表情が告げた。
「事が片付いたらゆっくり話そう。君と話したいことが沢山ある。最後に·····」
手を取られて立ち上がったら、背の高い相手は不意にかがみこんできた。
目の前で目を合わせられる。突然の事で焦るのに、視線は離せなくなる。
立体的な顔立ちだ。
相手も確かめるようにこちらを見つめていて、変な気分だ。
口元が綻んだら、花が咲くのを目の前で見た気がした。
「君のことを愛してる」
余韻を残して面会は終了した。
話したいことって、なんだろう。
そんなことを頭の片隅で考えながら、さっき告げられた単語が反芻する。
「··········っ」
ドキドキ、うるさいのが、耳の奥で響く。
(一体·····)
一体、どういうつもりなんだ?
甘い囁きは何度もよみがえって、しばらくミチルを翻弄したのだった。
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