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二章
re.《292》雛
しおりを挟む「僕から目をそらさないで」
時折見せる、寂しげな眼差しに調子が狂う。
水面に滲むようなローゼがあまりにも美しいせいだろうか。
幻の生き物にでも見つめられているような気分だ。
「逢いたかったんだもん」
(だもん、って·····)
また、甘えるような話し方。
脳内には親鳥を無くしたヒナが思い浮かぶ。
「あなたはそうじゃなかったの?」
頭を振って煩悩を追い出す。
そんな可愛いものじゃないし、まともに理解できないのは自分のせいでもない。
「そっちに行ってもいい?」
「だめ」
慌てて拒絶する。
迷いでもしたら、飛んできそうだ。
(なに?)
サラサラ光る桜色の髪が影を作る。
悩ましげに、何故か苦しそうに眉をゆがめるのは、見てはいけないものを見る気分だ。
「じゃあ、あなたがこっちに来て、僕のこと抱きしめて」
とんでもない。
「嫌」
もちろん首を振る。
「·····そう」
あの時も、彼はこんな顔をしていたのだ。
着いてくるなと言って、道端に置き去りにした時を思い出していた。
そして今の彼は、直ぐにニコリとしてみせた。
「ごめんね」
「··········」
"どうかこの役割を引き受けてくれないだろうか"
あの魅惑的な眼差しが与えた任務を、脳内で反芻する。
犯人に揺らがされ、ぶれてはいけない。
これは自分の責務だ。
「土地になにをしたの?」
謎ばかりの血魔術。
彼のせいだと、確信を持っている風にして問う。
「何もしてないよ」
彼はあっさり首を振った。
「そんなことより僕について聞かないの」と、悪びれもせず見つめ返してくる。
無駄に涼しく輝く双眸だ。
それなのにまとわりつく、湿った視線。
視姦されている気分にまでさせられて、自意識過剰とは思いながらも首をすくめる。
「ていうか、土地については、僕のことを知ってもらう必要があるんだけれど·····」
はぐらかしてるのか?
こちらが焦ってるのを見て、面白がっているのか?
「ヨハネスを·····ころそうとしたの?」
質問を変えて問てみる。
彼の目的が分かれば、解決の糸口が見えるかもしれない。
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