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二章
re.《285》責務
しおりを挟むなにか目的があるのかすら分からず、相手の狙いはミチル自身だ。
しばらくの沈黙が続いた。
「ミチルを呼べ」
ダリアの言葉に次男と三男が異議を唱える。
「馬鹿なこと考えてんじゃねえだろうな?」
ミチルを利用していた男。
そして、ミチルが初めて好きになった男。
彼はどこまで冷酷になれば、あんなにもいたいけな伴侶を危険な目に合わせられるのだろうか。
「あの野郎より先に殺すぞ」
「これはミチルの責務だ」
───それは、他でもないダリア自身、最も苦渋の決断だった。
皇帝である自分は、国と民を守る使命がある。そんなものは、ミチルを天秤にかければ無くしても良いと思う悪魔と、その使命の元に生まれた自分が対立する。
更に重要な懸念点は、他にもある。
「"血魔術が解かれぬとき、呪いに関わった全ての者は、皆無残な最期を遂げる"」
誰にともなく告げたのはレイモンド。
「この神話は、創り話ではございません」
「·····!!!」
世界師である彼は、この世界の一つ一つを記録している。
ヨハネスは無言のまま一点を見つめている。
他に方法がないことを、既に理解していたのだ。
見えない時限爆弾は、ミチルにも埋め込まれている。
その場にいる全員がその事実を黙知した。
「然しそれは、血魔術本人も同です」
流暢な滑舌と穏やかな表情。
立ち上がったレイモンドの姿は健全そうに見えるが、その顔色はやはり青白い。
「───さっきも説明した通り、この呪いは果たされなければ解呪されない。たとえ本人でも解呪は不可能」
彼の先をルシフェルが続ける。
「術者が最も恐れるのは己の血魔術の呪縛だ。術者への呪縛の強度と代償は、血魔術の難易度によってより強固で、畏怖となる」
───彼は既に一度、ミチルと接触している
その時、ミチルは危害を加えられるどころか、恐怖すら覚えていない。
それはとても不自然な事だと、誰もが感じることだ。
「それほどのリスクを犯して、条件は"ミチルを差し出す"ことでも"食す"事でもなく、完全に二人きりの状態になることだなんて·····そうだね、ハインツェの言う通り、彼はイカレていると考えるのも可笑しい事じゃない」
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