562 / 801
二章
re.《278》呪い
しおりを挟む───かなり、まずい。
下方向からオーロラの輝きが膨らむ。
レイモンドだ。
地上へ降り立った兵士たちは、まさに魔物の雪崩の先にいる。
再び防御壁をあみ出そうとしたレイモンドは、しかしその場に跪いた。
「!?」
「彼はもう使えないよ」
血術の呪い。
血を含む攻撃を喰らったものを呪うことが出来る。
呪いは様々だ。
しかし、こんなに早い効果は聞いたことがない。
「今は意識があるけど、そのうち·····───」
青年はふと言葉を止めた。
真っ直ぐ前方から、強い殺意を感じたためだ。
「なんだ。元はと言えば全部そっちのせいなのに」
(生け捕りにする余裕はない)
ヨハネスは決意した。
レイモンドらがいる方向へ猛進する魔物たちを止める術も無い。
彼らを犠牲にしてでも、必ず目の前の男を、一撃で処分するのだ。
そうでなければ、今後の被害は計り知れないだろう。
もしかすると、最も大切な者にまで危険が及ぶかもしれない。
そんなことは、絶対にさせない。
地面が崩れ始める。
足場は残されていない。どこへも逃げることは出来ないのは、相手も同様だ。
(正面から、心臓を貫く)
距離は100メートル。好戦的なタイプで、猛進派。
彼は必ず攻撃を仕掛けてくる。
ヨハネスは飛び出した。
身が砕けたって、この剣は命令通り必ず相手の心臓を突き刺すだろう。
薄桜色の輝きが舞って、こちらへ距離を詰めてくる。
引きつった笑みは興奮を隠す素振りもない。
「Bye!!!」
少しハスキーな声が攻撃を醸し出す瞬間。
そしてこちらが剣へ力を込めた、その瞬間。
────当たりは真っ白に包まれ、視界を阻むものが無くなり────世界から音が消えた。
白い空間が晴れると、砂煙が消え去った向こうには、眠る魔物達。
兵士たちは皆ざわめくが、誰一人として言葉を発することが出来ないようだった。
「·····?」
目の前の敵の表情も自分と同じく。
この様子では、彼の仕業ではない。
そして青年の身だけが、透明なカプセルに覆われる。
眩い光だ。
朝日ではない。
33
お気に入りに追加
2,287
あなたにおすすめの小説

監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。


別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。


その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる