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re.《277》
しおりを挟む「邪魔だな·····」
青年が初めに狙いを定めたのは、兵士たちを救った、この国唯一の世界師。
「先に殺そう」
「·····!!!!」
振動が集中し始めた。
刹那のうちに、地面は文字通り刃物へと化す。
彼の血魔術は、まさに始まったばかりなのだ。
ヨハネスは咄嗟にレイモンドを吹き飛ばした。
それと、地面が地上高く無数の刃を突き立てたのは同時だ。
防御にマナを集中させかけ、回避する。
無駄に能力を使うことは避けたい───そんな戦略を不可能にする、絶大な攻撃力が大地を揺らした。
「死にたいなら逃げ回らないでよ」
「·····巫山戯るな」
相手の目的はなんだ?
───いや、そんなことは関係ない。
『野良ギルドの謎の能力者は生け捕りに』
恐らく間違いない。目の前の男が目的人物だ。
彼は、今すぐに処分しなければいけない。
光より早く、ヨハネスは彼の懐へ忍び込んだ。
「·····わ!」
全神経を研ぎ澄ますのは、それよりも短い。
起こりうる異常気象は、主が死ねば終わる筈だ。
心臓目掛けて突き刺したマナの剣が少し擦れ、相手の脇腹を貫通し、爆破する。
砕けた青白い火の粉が舞う中で───目の前で、初めて青年と見つめ合う。
青みがかった桜色の眼。
光を反射して輝く白に、空色が灯っている。
それは吸い込まれるような瞳だった。
"ヴォーーーン!"
「·····!?」
""ヴォーーーン!ヴォーーーン!!!"
遠くから鳴り響く、低く太い警報。
「な·····!!!!」
振動の正体が、新たに加わる。
初め、砂埃かと思われた遠くの景色が近づいてくる。
やがて露呈したのは数万を超える魔物の軍団だ。
"ヴォーーーーン!!!!"
「まだちょっと、タイミングがイマイチかな」
振り返った先の青年は笑っていた。
破けた服から覗いた身体は、細身からは意外な程鍛え上げられた肉体。
致命傷を与えたはずだが、すっかり完治している。
「色々と疎いんだ·····」
回復力と、この能力出力量、そしてごく稀にしか発言しない血術の使い手。
(これは·····)
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