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re.《255》知らない
しおりを挟む「ジェロンのせい」
辛うじてそれだけ、言葉をぶつける。
「·····」
硬い声は立ち止まったままだ。
「·····?」
しくしくと涙を流していたミチルは、そういえばと、変に思って瞬きをした。
「何故」は、疑問。
機械みたいな男でも、疑問を抱いたりするんだ。
涙を流してやっと興味を持ったのだろうか。
もう知らない。
彼は任務のためにそばにいるのに、それに好意を持つなんて、システム通り稼働するロボットに愛着が湧くのと一緒だ。
薬も飲んでやらない。
仕事が思い通りにならなくて、怒られてしまえばいいんだ。
それで、こっちの話を聞かなかったことを、少しでも後悔したらいいんだ。
(それで、もっと優しくしてくれたらいいのに)
それこそ、彼にとって自分は仕事の関係でしかない。
どうしようもない寂しさとむなしさに胸がキリキリ痛む。
当たり前のことに気がついた。それだけ。
彼に背を向けてベットの上でうずくまる。
なにかやれるものならやってみろ。
いくら強く膝を抱えたって、みぞおちの辺りが空いてる感じがする。
目頭の熱も取れない。
スピ、と、鼻をすすったら、ベットに影が落ちた。
空模様も浮かなくなくなってきたのだ。
そう思ったが、違った。
「私のせいですか」
背後にはこちらを見下ろす気配。
視界の端に、ベットへ添えられた長い指が映る。
「お分かりになっていないのは、余程ミチル様の方でしょう」
思わずギクリとする。
悲しみにあけくれるこちらの気も知らず、逆ギレと来た。
「お口を開けてください」
「や·····───」
ヤダって、言ってるじゃないか。
そんな反論は叶わなかった。
振り返ったのと、彼がかがみこんできたのは同時。
「あ」と思った頃には、上唇に吐息がかかった。
塞がれた唇と熱。
慌てて彼の肩口に手をやるが、それは岩みたいにビクともしない。
ぬめったものが入り込んでくる。
それが喉を押し広げて、何かを流し込んできた。
思わず飲み込むと、喉奥で微かに渋い味がする。
「!?ニャ·····───んぅ··········っ」
傾いてきた高い鼻が花をくすぐる。
薬を飲まされたのだ。
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