悪魔皇子達のイケニエ

亜依流.@.@

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二章

re.《254》硬い声

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もしかして、飲みたくなくて話題を変えたとか、彼の機嫌を取ろうとしたと思われたのか?
そもそも、さっきの言葉で彼の機嫌を取ることが出来るなんて到底思ってない。寧ろ不快に思われないのが良いところだ。

でも、彼はそうしているんだと思ったのだろうか。
だとしたら───。

(意味わかんない)

とにかく、誤解を解かないと。
そうじゃないと。


「ほんとに、好きなの」


ミチルは繰り返した。
そうじゃないとちゃんと言葉で伝えても、届かないことになる。
そんなの悲しい。

だから、暗がりになった相手の表情がどうなっているのかは、気が付かなかった。


「す·····─────」


パキッ。
小さく響いた音に、ミチルはハッと口を閉ざした。

ジェロンが片手に持っていたビンの蓋だ。
それが割れて、彼の指に切れ目を作る。慌てて触れようとしたら、彼は素早く片手を上にあげた。


「大変申し訳ございません」


傷はすぐに塞がり、割れた蓋は布にくるまれた。


「充分わかりました。ですから」


頬に触れた手のひらは、さっき頑丈な蓋に亀裂を入れた物とは思えないほど、壊れ物を扱うようにこちらへ触れる。

導かれるように上を向かせられる。
呆然としていたミチルは、彼の手を振り払った。


「分かってない」


(言葉にしても伝わらないなら、どうしたら良いの?)

絶望に、頭の中は真っ白になる。


「ミチル様─────」


ジェロンの言葉は続かない。
目の前がぼやけて、目頭が熱い。
こっちを見る世話係の表情はとても見られなかった。


「なぜ、そのように涙を流すのですか?」


抑揚の少なくて落ち着いた声だ。
それなのに、一瞬、刹那に覗いたのは、動揺。

気のせいだ。
彼には、気持ちが伝わらない。
悪魔は、伝わらないんじゃなくて、皆他人の気持ちなんてどうでもいいんだ。
悪魔だけじゃない。人間界でもそうだった。
それなら、無くてもおなじじゃないか。










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