529 / 724
re.《245》ぶっ飛ばす
しおりを挟む結局簡潔に告げるしかなくなる。
大きな瞳はぱちぱち瞬きして、悲しそうに眉を下げた。
鳴き声は可愛らしい。こんな表情も好きだが、笑うともっと愛らしい。
「相手をぶっ飛ばしてやる」
俯いていたピンクがパッと見開かれる。
(くそ、可愛いな)
たったそれだけでそんな感想を持つ自分もどうかしてる。
こいつには、どうしたら敵じゃないとわかってもらえるだろうか。
「俺はお前の味方だ」
ミチルは滅多に話さない。
しかし臆病な彼は人を信じられない。
言葉が必要なのだ。
だから何度でも、こうやって言い聞かせてやればいい。
多分、皇子たちの中で、自分は器用なほうじゃない。
変わらなければいけない。
ミチルのために。
「分かったか?」
そう問いかけられたミチルは、薄い唇を引き結んだ。
「·····どうして?」
───もしかしたら、こんどはまた別の欲望でこっちを懐柔しようとしてるのかも。
だって悪魔はそうだ。
こんなふうにくっついてちゃダメだ。ゴツゴツした岩から降りようとしたら、相手はまた「気をつけろよ」と過保護に体を支えてくる。
お腹に回された褐色の手をどかそうとしても、相手は拒絶されてることすら気がついて無さそうだ。
「お前が好きだからだ」
抵抗を始めて1分くらいだった頃だ。
なんの前触れもない、短い言葉に、ミチルははたと動きをとめた。
「おい」と荒っぽくこっちを呼ぶこの口は、今、なんと言ったか?
「ああ、クソ。言葉にするとなんかしっくり来ねえな·····」
忙しなく髪をかきあげる。
いつもの堂々とした感じより、少しバツが悪そうに見える。
心地よいそよ風が流れていった。
「にゃ、な·····なん·····」
「あ?」
3秒ほど見つめ合って、パッと視線を逸らしてしまう。
黄金の瞳は真剣だ。
「なんでって·····だからお前が好きだからだって」
言ってるだろ、と、語尾はため息混じりだ。
そういう回答を求めてるんじゃない。
「にゃぁ·····」
降ろしてと言おうとする前に、思わず鳴き声が漏れる。
「甘えた声出すなよ·····どうにかしてやりたくなる」
42
お気に入りに追加
2,183
あなたにおすすめの小説
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
変態村♂〜俺、やられます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。
そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。
暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。
必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。
その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。
果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる